【グラスゴー=藤中栄二】挑戦者でWBA正規王者の井上尚弥(26=大橋)が、2回1分19秒TKOでIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)を下し、決勝進出を決めた。2回に左フックなどで計3度のダウンを奪ってレフェリーストップに追い込み、WBAとIBFの2冠王座に就いた。5階級制覇王者のWBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)との決勝は、日本開催となれば京セラドーム大阪が有力候補として浮上した。

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試合後のリングで、井上はワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)開幕前から対戦希望してきたドネアから祝福を受けた。過去最強の相手となった無敗王者ロドリゲスから計3度のダウンを奪って圧倒的な強さを誇示し、決勝の相手と堂々と向き合った。「尊敬するドネアと戦えることをうれしく思います。そこに向けて1からやっていきたい」。笑顔で抱擁を交わしたドネアから「ベスト・オブ・ベストの戦いができる。戦う運命にある」と認められた。

その運命的な決勝にふさわしい大舞台が浮上してきた。カードが決定したばかりで時期や開催地さえ決まっていないものの、もし日本開催となった場合の有力候補に京セラドーム大阪が挙がった。大橋秀行会長は「やはりドネアは尊敬されるボクサーで、尚弥もあこがれている選手。横浜で私も偶然会ってすしを食べた間柄。それなりの舞台を」と候補として考えていることを認めた。

ボクシング界の国内ドーム大会はマイク・タイソンが88年、90年に東京ドームで2度世界戦に臨み、99年には辰吉丈一郎が当時のWBC世界バンタム級王者ウィラポン(タイ)に挑んだ大阪ドーム(現在の京セラドーム大阪)の3例のみ。もし京セラドーム大阪でボクシング興行が開催されれば20年ぶり。実現すれば令和のボクシングの幕開けにふさわしい大会となる。井上-ドネアのWBSS決勝の意義もさらに高まりそうだ。

井上にとってドネアは特別な存在だ。以前から衝撃の試合として挙げるのは11年2月、ドネアがWBC・WBO世界バンタム級王者モンティエル(メキシコ)を左フック1発で失神KOに追い込んだ世界戦。14年12月、WBO世界スーパーフライ級王者ナルバエス(アルゼンチン)に挑戦する前には大橋ジムでドネアと合同練習。攻略の助言まで受けた。井上は「人間的にも尊敬できるし、縁もあるので戦いにくい。でも、そこは勝負の世界。やるしかない」と強調した。

フィリピンの閃光(せんこう)と呼ばれるドネアと、モンスターの井上が激突する階級最強を決めるトーナメント決勝。京セラドーム大阪開催が決まれば、機運も最高潮に達することは間違いない。