魔界の門が閉じた。2月の東京ドーム大会で現役引退する武藤敬司(60)が代理人を務める「悪の化身」グレート・ムタが、思い出の地、横浜でのラストマッチを行った。

90年代にWCWで抗争を繰り広げた最大のライバルにして盟友のスティング(63)、AEWのトップレスラー、ダービー・アリン(30)と夢タッグを結成。白使、AKIRA、丸藤組と6人タッグマッチで対戦し、22分23秒、スティング、アリンの連係アシストを受け、閃光(せんこう)妖術で白使を沈めた。

89年に米国で誕生してから34年。最後は、花道でさまざまな感情が入り交じった緑色の毒霧を天に噴射。ムタが現世にさよならを告げた。

96年4月の新日本プロレス東京ドーム大会、白使戦。凄惨(せいさん)なファイトの末に卒塔婆に「死」と書き込んでトップヒールの神髄を示した、あの伝説の一戦をほうふつとさせる激しい戦いとなった。白使の使者から卒塔婆を奪い取って真っ二つに破壊すると、白使の額に突き刺した。ドラゴンスクリュー、閃光(せんこう)妖術を乱れ打ち。逆襲を受ける場面もあったが、パートナーに救出されて勝利を収めた。

だが、あの日とは違った。マットに大の字になった額から血を拭い取り、白使が持ち込んだ卒塔婆にムタが書き込んだ文字は「完」だった。バックステージでは「バイバイ、エブリバディー。ノーモアームタ。グッバイ」と短く締めくくった。

【写真特集】BYE-BYEグレート・ムタ 毒霧に凶器も…独特の世界観を築いたムタ・ワールド