史上初の高校8冠を含むアマ12冠を達成した荒本一成(24=帝拳)が19日、東京・後楽園ホールでプロテスト(B級)を受験して合格した。

プロではミドル級(リミット72・5キロ)を主戦場にする逸材は、1階級下の日本スーパーウエルター級(同69・8キロ)1位の玉山将弥(30=帝拳)に鋭い左ジャブをビシビシと決めて、パワーとともにスピードでも圧倒した。

「後楽園ホールのリングに上がるのは大学4年の夏のリーグ戦以来3年ぶり。プロになったので新鮮で、ちょっと緊張しましたけど、やってみたらふつうの感じでできた」と、荒本は落ち着いた口調で3ラウンドのスパーリングを振り返った。

王寺工高時代にウエルター級で15~17年に総体、国体を3連覇し、15、16年の選抜も連覇して、高校8冠を達成。日大進学後も国体連覇、全日本選手権などを制覇した。昨年の全日本選手権で敗退してパリ・オリンピック(五輪)出場の道が断たれた後にプロ転向を決意したが、大学1年から週5回の割合で帝拳ジムで練習していた。

同じ階級で世界を制した帝拳ジム所属の元WBA世界ミドル級王者・村田諒太の練習もよく見ていたという。「身近で見て勉強させてもらった。(村田は)サンドバッグも打ち方なども考えて打っていた。自分も重量級なので大きいサンドバッグだけではなく、小さいのでパンチを当てる感覚や、右ストレートのタイミングの練習も大事だと思ってやってます」。

プロデビュー戦は6月の予定。「(アマチュアの)3ラウンドから長いラウンドになるので、スタミナやペース配分。そして重量級は1発があるのでもらわないように集中力高めること。技術やパワーよりそういうことが大事だと思っている。ミット打ちもで力を抜くところを抜いてメリハリつける練習をしている」と、今は心身をプロ仕様へと変換中。

もちろん最終目標は世界の頂点。「自分の持ち味は重量級のわりにスピードがあること。考える能力なども人よりはすぐれていると思う。重量級は軽量級とは違う。時間かかってもいいのでトップを目指せれば。まず1つ1つ。日本や地域タイトルを取っていったら最後は世界が見えてくる。そこは焦らずにいく」。村田の引退から1年。新たなミドル級の星が、世界への難路に踏み出した。【首藤正徳】