横綱鶴竜(32=井筒)が、大相撲九州場所(12日初日、福岡国際センター)で完全復活する。2日、福岡入り後初の出稽古を行った。時津風部屋で平幕正代、十両蒼国来相手に11番全勝。先場所全休の原因となった右足首の回復をアピールした。2度の途中休場を含む3場所連続休場明けで“背水の場所”となるが、九州場所は14年夏場所の横綱昇進後、唯一休場経験がなく、昨年は優勝と験がいい。復活の舞台は整った。

 テーピングもサポーターもない。ありのままの鶴竜が、出稽古で関取を圧倒した。蒼国来と7番、正代と4番とり、引いた相撲は2番だけ。ほぼ前に出続けての11番全勝。先場所全休理由の右足首負傷の影響を感じさせなかった。「普通にできてるかな。踏み込みを意識した。しっかり立てるか。良かったですね」。口調も表情も穏やかだ。

 肌を合わせた2人も、横綱復活を感じた。蒼国来は「体が硬くなった。ガーンと来る。だいぶトレーニングやってますよ」。正代も「(当たって)痛かったですね。まだ手探りとは思いますけど」と言う。

 今場所は瀬戸際だ。名古屋場所4日目に横綱在位20場所目で2場所連続6度目の休場が決まった際、師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)は「今度、前半で連敗が続いたり、途中休場した時には、きっちり決断しないと…」と語った。鶴竜も腹をくくった。なのに今、気負いはない。「いつも同じ気持ちで。特にプレッシャーをかけなくてもいいと思っています」。順調な仕上がりが心を軽くする。

 10月1日に都内で同郷のムンフザヤ夫人と挙式した。既に15年2月に婚姻届を提出、1男1女ももうけた。ただ「あの日、指輪をしてあらためて…ね」と照れながら「こういう中で式を挙げさせてもらって。後は自分が頑張って(周囲に)感謝を伝えたい」と決意を語る。横綱になり唯一休場経験がない九州場所。しかも、昨年は14勝1敗で優勝した。この日、午後には福岡市の住吉神社で奉納土俵入りを終えた。「もちろん引き締まります。参拝する時なんか」。“強い鶴竜”を見せるため、残り9日でさらに調子を上げていく。【加藤裕一】