貴乃花親方(46=元横綱)が1日、日本相撲協会を退職することが決まった。東京・両国国技館で行われた臨時理事会で、退職届と貴乃花部屋の力士8人、床山、世話人の計10人の千賀ノ浦部屋への所属先変更願について審議され、満場一致で受理され、貴乃花部屋は消滅。八角理事長(元横綱北勝海)は「残念」などと話し、これまでの功績、貢献をたたえた。

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節目の日に八角理事長が会見したことが、長い間、相撲界に貢献した貴乃花親方への敬意の表れだろう。昨秋から不祥事が続く中、自身らへの殺害予告が出てから、本場所の取組以外のことで八角理事長がコメントする機会は激減。これまで対立が続いたが、相次ぐ称賛の言葉で送り出した。

だが、最後まで2人の意思疎通が不十分で、腹を割って話せなかった印象が強く残った。同時に、それが今回の退職に大きく関係したと感じた。貴乃花親方が退職の意向を表明した9月25日の会見を見た感想として、八角理事長は「何で辞めるんだろうと最初に思った」という。5つある一門のいずれかに所属しなければ部屋を運営する資格を失うと思っていた貴乃花親方と、門戸は開いていたと主張する協会執行部。親身になって相談に乗ろうとしたはずの旧貴乃花一門の阿武松親方(元関脇益荒雄)の言葉も、貴乃花親方には圧力と受け取られた。阿武松親方は「残ってほしかった。私の力不足」と悔やんだ。

退職届、弟子らの所属先変更願を受理した日も、9月25日にこだわる貴乃花親方サイドと、退職届は1日付、所属先変更願は再提出された9月29日付にすると発表した協会。そんな小さなことにも意地を張り合うほど、対立は根深かった。ボタンの掛け違いの連続。八角理事長が繰り返した「残念」という思いを、誰よりもファンが感じていると理解しなければ、今後、相撲人気に陰りが出るかもしれない。【高田文太】