西十両11枚目の安美錦(40=伊勢ケ浜)が、5連勝で5勝4敗と白星を先行させた。184センチの自身よりも9センチ低い、この日の取組相手の翔猿と変わらない、低い立ち合いで頭からぶつかると突き放した。相手の引きに乗じて一気に前に出て押し倒し。「(相手に)来られても1歩踏み込んで、当たっていこうと思っていた。向こうも当たってきたら(懐の中に)入ろうという意識だけ。あとのことは覚えていない」と、無心でつかんだ白星と強調した。

白星先行にも「そういうことを考えると、今日の相撲に出るのかなと思ったので、そんなに考えずに自然といけた。気楽に相撲を取れている」と、勝ち負けにとらわれずに取り切れている精神面を好調の要因に挙げた。前日8日目には、初日からの4連敗を思い返して「前半のことを考えれば、引退発表していてもおかしくない」と、冗談めかして話していた。この日は「今日は力で相撲を取れた。『相撲を取っている』という久しぶりの感触。この感触を覚えておかないと。もう、こんな相撲を取れないかもしれない。毎回、そのぐらいの気持ちで取っている。(慢性的な両膝の痛みなどで)場所前に稽古しているわけじゃない。(勝因は)気持ちじゃない。ギリギリのラインまでくると、人って力を出すんだね」と、しみじみと語った。その後、続けて「まだまだやめるつもりないけど」と笑顔。再び幕内の土俵に立つと、自らに言い聞かせるように話していた。