大相撲の大関貴景勝(26=常盤山)が、春場所(12日初日、エディオンアリーナ大阪)で綱とりに挑む。昨年11月の九州場所は優勝決定ともえ戦で敗れたが、1月の初場所で3度目の優勝。2場所連続優勝を果たせば、直近3場所の安定感も加味され、場所後の横綱昇進は濃厚という状況だ。重圧の懸かる場所を前に、貴景勝と対戦経験のある元横綱の宮城野(元白鵬)、二所ノ関(元稀勢の里)、鶴竜の3親方が期待の言葉とゲキを送った。【取材・構成=高田文太、平山連】
◇ ◇ ◇
貴景勝は横綱に昇進できるのか? そんな大相撲ファンの率直な疑問を、実際に貴景勝と対戦した経験のある、元横綱の3親方に聞いた。出身の兵庫県に程近い、年に1度のご当所春場所だけに、貴景勝への期待や声援も一段と大きく、重圧は計り知れない。心技体の充実が求められる、番付最高位への挑戦に打ち勝った経験のある3人だからこそ、言葉は熱を帯びた。
貴景勝の横綱昇進に、最も力強く太鼓判を押したのは、宮城野親方だった。
宮城野親方 「(昨年)11月から相撲内容が違う。2月は巡業がなく、出稽古期間も限られるけど、コロナ禍は今に始まったことではない。実戦感覚の部分もしっかりとやるでしょう。春場所に照ノ富士が出るなら、千秋楽まで取りこぼせない。この2場所の流れを忘れず頑張ってほしい」。
1月末の引退相撲では、最後の土俵入りの太刀持ちに貴景勝を指名した。歴代最多45回優勝の宮城野親方が、一門の違う貴景勝を太刀持ちに選んだのは、次の横綱への期待の表れ。貴景勝も「光栄。あんなに近くで横綱土俵入りを見たのは初めて」と感激していた。
逆に同じ二所ノ関一門だからこそ期待する、二所ノ関親方は具体的な助言とともに警鐘も鳴らしていた。
二所ノ関親方 「相手が張ってきたら張り返すような、感情に流れてしまうのは危険。横綱に上がるには平常心、一喜一憂しないことが大事。相手はみんな、あおって怒らせにくる。その隙を狙ってくるから。上位が負けるのは焦り、隙が出た時。今は12勝が優勝ライン。集中して15日間やれれば12、13勝はいける」。
突き、押しに特化した相撲は安定感を欠くともいわれるが、むしろ高評価だ。
二所ノ関親方 「あんな突き、押しは見たことがない。腰を引いて頭を下げ、まわしを取らせないことを続けている。突き、押しだけど僕からしたら突き、押しじゃない。1つの型」。
一方で先場所は珍しく投げで2勝するなど、取り口にも変化が出た。鶴竜親方は、そこも成長だという。
鶴竜親方 「間違いなく(首の)ケガの影響でしょう。無理にガツンと当たらなくても、相手を見ていけば大丈夫。そういう相撲になってきた。ケガとうまく付き合うことができるようになったし、大関の地位に慣れて自信が出てきた」。
“心”の成長と充実が、現在は“技”と“体”に好影響をもたらしたと分析した。だからこそ、もう1段階“心”の成長を求めた。
鶴竜親方 「自分の時は本当に相撲だけに集中していた。周りの誰に何と言われようと。毎日が大事。ただ目の前の相手に集中し、あとは自分との闘い」。
現在は横綱照ノ富士が、両膝の手術などで3場所連続で休場している。125年ぶりに1横綱1大関となった先場所に続き、貴景勝は看板力士の重責を担う。ただ3親方の思いを代弁するように、鶴竜親方は「新しい人が出てこないと盛り上がらない。ファンは待っている」と、新横綱誕生を期待。貴景勝の15日間に、元横綱の各親方が厳しくも温かい視線を注いでいる。
◆最近の貴景勝 昨年3月の春場所から、6場所連続で勝ち越している。最近4場所は全て2ケタ白星。特に直近2場所は連続12勝で、優勝同点、優勝の好成績を残している。昨年11月の九州場所は、阿炎、高安との優勝決定ともえ戦で敗れたが(優勝は阿炎)、1月の初場所で優勝。照ノ富士が休場し、大関以上が1人の中、千秋楽で平幕琴勝峰との相星決戦を制し、連日結びの一番で責任を果たした。大関で優勝同点→優勝の翌場所も大関だったのは、ともに後に横綱となる初代と3代目の2人の若乃花以来、3人目だった。

