日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会(横審)は25日、東京・両国国技館で定例会合を開いた。前日24日まで行われた秋場所で優勝した大関貴景勝について、定例会合後に会見に応じた山内昌之委員長(東大名誉教授)は高く評価した。

山内委員長 「11勝4敗は、歴史的にも低い星での優勝であったかもしれませんが、かど番の貴景勝が大関としての自覚と責任を全うして優勝にこぎ着けたという、この事実こそが大事。けがや、けがからの回復を目指す多くの力士にとっての、大変大きな福音。大変すばらしい知らせ、朗報になったと思います。そちらの面を私は評価して、貴景勝の健康の回復を願いたいと思っております」。

会見の冒頭で、こう切り出した。貴景勝は、前頭熱海富士との優勝決定戦で、立ち合いで左に動いてはたき込んだ。インターネット上などでは、この取り口に、多くのファンから批判的な声があがった。この点についても私見を述べた。

山内委員長 「優勝したという事実。これは相撲史に残る、さんぜんと輝く結果。本割と決定戦の2つに勝ったということが大事なこと。むしろ決定戦までいったことを、前向きにとらえていくという見方も必要ではないか。相撲は稽古と努力の競技。そういう面も見ていきたいと思います。11勝4敗は、優勝の星としては、一部には物足りないと感じる人もいるかもしれません。しかし大事なことは優勝杯と取るかどうか。そこに向かった努力が大事。優勝することができる力士は1人しかいない。その事実こそが大事。貴景勝が膝の疾患と(古傷の)首痛を乗り越えて優勝したというのは、多くの人々に感動を与える。(立ち合い変化は)なかなか難しい問題。一義的には答えられない。私も何回もビデオでも見ました。一部で『飛んだ』という表現を使っているメディアもありましたが、私の感覚では飛んでいない。せいぜい『変化した』と言えるかもしれません。変化と飛んだでは違いがあって、ぶつかってかわしている。とにかく(熱海富士の)右を差させたくなかった、という気持ちが、あのような形になったのではないかと私は考えています。私の解釈は一方的で、貴景勝に対して『ひいきが過ぎる』と言われたら、そういう解釈もあるだろうとは思いますけど。ただ、全く変わった、飛んだという、すこぶる嫌な印象を極度に後に残すようなものではなかったという気持ちです」。

11勝4敗の優勝は、1場所15日制が定着した49年5月場所以降で4度目となる最少白星だった。さらに前日24日、昇進を預かる審判部の佐渡ケ嶽部長(元関脇琴ノ若)は、貴景勝の綱とりについて「(来場所の)千秋楽まで見てみないと分かりません」と、慎重な姿勢を示した。それでも同委員長は、次の九州場所(11月12日初日、福岡国際センター)は「多くの条件や前提が満たされた場合、綱とりの期待が懸かる場所」と語り、横綱昇進を期待していた。

また同委員長は、秋場所が横綱昇進後の13場所で7度目の休場となった照ノ富士にも言及し、理解を示した。「腰の病と糖尿病で、土俵で十分な相撲を取ることが難しい事態。しかし大相撲全体に対する貢献を見なければならない。巡業への参加、多くの人々への接触などで責任を果たしている。評価していい」と語った。取組こそ行わなかったが、土俵入りなどで7月末から約1カ月の夏巡業を皆勤した姿勢を評価。「復帰を待ちたい」と続けていた。

貴景勝が一夜明け会見 来場所は明確な綱とりではないが2度失敗の教訓生かし「三度目の正直」へ