日本相撲協会は28日、都内で理事会を開き、宮城野部屋の宮城野親方(39=元横綱白鵬)、間垣親方(34=元前頭石浦)の親方衆2人と、十両伯桜鵬(20)ら力士らが、伊勢ケ浜部屋に転籍すると発表した。

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宮城野部屋の処遇について二転三転する事態に至ったのは、同部屋が所属する伊勢ケ浜一門と日本相撲協会執行部との間での話し合いがスムーズにまとまらなかったからだ。4月以降は伊勢ケ浜部屋への一括転籍と決まったが、将来ある力士らの精神面や環境変化などを考えれば、なんとか部屋を存続させる方法はなかったのかとも思う。

場所前に伊勢ケ浜一門内で総会が行われた際には、宮城野部屋の当面の閉鎖を念頭に意見がまとめられた。これも宮城野親方が現役終盤に土俵上での品格が問題視され、現役引退時に協会の規則を守ることや逸脱した言動を行わないなどの誓約書に署名し、異例の形で年寄襲名が承認された経緯から、過去の事例と比べても重い処遇に至ったことの影響もあるとみられる。

この時点では宮城野親方、部屋付きの間垣親方、力士は一門内のそれぞれ別の部屋に転籍する案を考えていたが、日本相撲協会の執行部側がそれを認めず差し戻した。ここで起きた双方の隔たりが、事態を大きく混乱させる要因となった。

再協議を余儀なくされ、方針が決まっては立ち消えを繰り返した。新理事の浅香山親方が師匠を務める浅香山部屋での転籍を執行部側から推されたことも。執行部側から「株を上げるチャンス。侠気(おとこぎ)見せろ」と促され、一門内の親方からも「後は魁皇さん次第」と外堀が埋められていた。

だが、同親方はこれを拒否。同部屋には相撲未経験から入門した力士も多く、宮城野部屋の力士、親方を合わせて約20人が一挙に転籍することに懸念があった。都内の同部屋の広さを考えると「稽古場にブルーシートを敷いて寝る力士だって出てくる」と拒むのも無理なかった。他に、元関脇旭天鵬の大島親方も自身の部屋に吸収合併する意向も示していたが、今度は協会側がこれを拒否。真相は定かではないが、関係者から「白鵬と同じモンゴル人だから、嫌ったのではないか」との声も出ていた。こういう推測が生じることはあってはならないこと。決定に至る過程で何が起きていたのか、周囲に対しても丁寧な説明が欠けていたのではないか。

最終的に伊勢ケ浜部屋でまとまった。春場所で110年ぶりの新入幕優勝を飾った尊富士の師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は育成面には定評があるが、過去に2度弟子の不祥事で理事辞任に追い込まれた。今年7月には64歳を迎え、定年まで残り1年余りしか師匠を務めることができないのは事実。その時が来た時、宮城野親方をはじめ力士たちの処遇はどうなるのか。そのタイミングまでに再び大きな変動があるかもしれない。【平山連】