小結大の里(23=二所ノ関)が、初土俵から所要7場所の史上最速優勝を飾った。

単独トップで臨んだ1差の関脇阿炎との大一番を、一方的に押し出した。12勝3敗で初優勝を手にし、元日の能登半島地震で傷ついた故郷石川県を沸かせた。新三役での優勝は67年ぶり2人目。殊勲賞と技能賞にも輝き、25年ぶり2人目となる新入幕から3場所連続の三賞受賞と快挙に次ぐ快挙の優勝となった。次の名古屋場所(7月14日初日、ドルフィンズアリーナ)で再び優勝争いに加われば、大関昇進の機運も高まりそうだ。

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「完成度はまだ10%」。千秋楽まで優勝を争った先場所、師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)は、大の里の無限の伸びしろを、こう評した。近い将来の大関、さらには横綱昇進を予感する言葉。だからこそ、いまだに本格的な四つ相撲を教えていない。師匠は「相手をグチャッとつぶすような立ち合いを身に付けることが先」と説明する。

大の里は小細工抜きの圧力に磨きを掛け、流れの中で寄り切ることもあるが、押し勝つのが基本形。初土俵以来、決まり手の42%が押し出しと、最も多い理由がここにあった。

実はこの教えこそ、二所ノ関親方が師匠だった先代鳴戸親方(元横綱隆の里)から言われてきたことだった。「心臓から汗をかけ」と、猛稽古を課された。この言葉は、先代鳴戸親方が現役時代、師匠で「土俵の鬼」と呼ばれた、元横綱初代若乃花の元二子山親方から言われ続けたものだ。二所ノ関親方は力士の自主性を重視する方針だが「自分で考えないと成長しない」と、取組に向けた具体的な助言をしないのは同じ。大の里は、初代若乃花、隆の里、稀勢の里と、3代続いた横綱の系譜を継ぎつつ、自力で初優勝を手にした。

大の里は入門会見で、将来像について「具体的な目標は言うもんじゃない。自分の中で決めている」と語っていた。余計なことは語らず、土俵で生きざまを示すという心意気も、3代続いた歴代横綱と重なる。何よりも小学6年にして「強くなりたい」と、新潟への相撲留学を決意し、茨城・阿見町の二所ノ関部屋を選んだのも「相撲に集中できる」。先人たちの教えを踏襲した将来の横綱候補が、まず最初の優勝をつかんだ。【高田文太】