どちらも夢だった初優勝と大関昇進を、同時につかむチャンスが到来した。三役2場所目、新関脇の安青錦(21=安治川)が、横綱豊昇龍を押し出し11勝目。横綱大の里も大関琴桜に敗れたため、1差を追っていた両横綱に3敗で並んだ。千秋楽で琴桜に勝ち、結びの一番に勝った方の横綱との優勝決定戦に勝てば、ウクライナ出身として初優勝となる。上昇ムードを後押しするように、審判部は千秋楽正午から、安青錦の大関昇進に関して会議を開くことを決定。初優勝の先に大関昇進が見えてくる。
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獲物を待ち切れないように、仕切り線に両手をついた安青錦は、上下に体を揺らしていた。低い姿勢で豊昇龍に頭から当たると、組みついて左下手を引いた。振りほどこうとする横綱に食らいつき、最後は右手1本で押し出し。「自分らしく下から当たって前に攻められた」と、うなずいた。
3人に絞られた優勝争いで、前日13日目は大の里に敗れた。豊昇龍も13日目に勝ち、両横綱を1差で追っていたが、すぐに追いついた。直前に大の里が敗れる姿を土俵下から見たが「その後が自分の相撲だったので特に何も思わなかった」と、集中力は途切れず。豊昇龍には初対戦から3連勝と、横綱を“お得意さま”扱いした。千秋楽の本割に勝てば、横綱対決に勝った方との優勝決定戦に進む。
これで新入幕から5場所連続で11勝に到達した。横綱の一角を撃破して初優勝の可能性を残したことを受け、昇進を預かる審判部は打ち出し後、安青錦の大関昇進に関する会議を、千秋楽正午から開くことを決めた。優勝すれば昇進か、本割で負けたら見送りかなど現状の方向性について、高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は「今、話すことじゃない」と詳細は伏せた。
ただこの日の幕内後半戦の審判長を務めた九重親方(元大関千代大海)は「それだけ盛り上がってきたということ」と、審判部内にも、昇進を推す声が増えてきたことをにおわせた。同親方は「こんなに安定して新入幕から上がってきた力士は初めて見た。メッキがはがれない。真の強者だ」と絶賛した。大関昇進目安は「三役で3場所33勝」。審判部はこれまで一貫して三役2場所目の足場固めと今場所を位置付けてきたが急転、初優勝なら昇進しそうなムードが出てきた。
師匠の安治川親方(元関脇安美錦)も「いつもと変わらず前みつを取れた。変えない勇気。やってきたことを信じて相撲を取れた」と称賛した。当の安青錦は「あまり気にせず明日(千秋楽)、悔いのないようにやり切りたい」と冷静。運命を切り開く日が、ついにやってくる。【高田文太】

