SKE48惣田紗莉渚(26)のグループ外初舞台となる舞台「トリッパー遊園地」の初日公演を取材した。

舞台の仕事をしたい。そう公言していた惣田の“舞台女優”としての初舞台は、感動の一言だった。

同作の舞台は2019年の現代と1944年太平洋戦争まっただ中の2つの時代だ。

観覧車がシンボルマークの山ノ内遊園地は、大道芸や手品のパフォーマンスなど昔風情が息づくが、現代とは時代の折り合いが悪く経営難に陥っていた。その遊園地の経営改革に乗り出す中、思わぬタイムトリップをすることになる主人公山ノ内マサヒロを演じるのはA.B.C-Z河合郁人(31)だ。河合にとって同作は、初単独主演舞台でもある。物語の鍵となる1944年の遊園地で働く山ノ内ショウヘイをふぉ~ゆ~辰巳雄大(32)が演じる。惣田はショウヘイに思いをよせつつも言い出せない女性ハルを演じている。

ネタバレになるため詳しくは言えないが、舞台全体としてはクスッと笑えるシーンあり、戦時中ということでシリアスなシーンありで、感情の起伏が激しくなる作品だった。河合と辰巳は約20年ぶりの共演だというが、そうは思えない掛け合いには信頼感さえ感じられた。

そんな中で、惣田の演技も初舞台とは思えないほど輝いていた。記者も当時を過ごしてはいないが、その当時、女性からの告白などは考えられない時代だったはずだ。そんな時代の女性を見事に演じていた。好きな思いを伝えたいが伝えられない。だが戦争によって2人は引き離されることになる。年のせいでいろんな所が緩んで来ているのか、このシーンでは不覚にも涙がこぼれてしまった。おじさんが1人涙している姿も相当シュールだっただろう(笑い)。だが、このシーンでは、会場のあちこちから鼻水をすする音が聞こえたことだけは伝えておこう。

惣田を稽古場でインタビューした際、「戦争というと悲しいイメージですが、悲しいだけではなく、強く生きようとした方がいたということを平成の最後に伝えられたらいいなと思います」と話していた。その思いは観客に届いていたと思う。少なくも記者には届いていた。そしてラストシーンでも…。

河合、辰巳、惣田らキャスト陣の演技はもちろんだが、この作品自体がすばらしく、脚本の良さも光っていた。こんな作品との出合いは、役者冥利(みょうり)に尽きるのではないだろうか。

23日まで東京・新橋演舞場、30日は岐阜・可児市文化創造センター、31日に愛知・豊田市民文化会館、4月3日から大阪松竹座で公演される。ジャニーズファン、SKE48ファンならずともお薦めしたい作品だ。【川田和博】