きらびやかなステージの裏側には、数多くのスタッフの存在がある。連載第3回に登場するSKE48の6期生だった竹内彩姫(23)は、現在、同グループが所属する会社で汗を流している。光り輝くステージから、裏方の仕事への転身。アイドルとしての経験もフル活用しつつ、これからのグループを、メンバーと一緒に作り上げていく。(文中敬称略)

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取材場所には、大きなキャリーケースを引いて現れた。取材前日は、7月5日発売の新シングル「好きになっちゃった」のミュージックビデオ撮影に立ち会っていた。

「現在は、SKE48を運営する株式会社ゼストのメディアリレーションズ&キャスティング部という部署に所属して、広報の仕事をしています。プレスリリースを書いて発信したり、ラジオ局や出版社周りに宣伝に行ったりと、広報と宣伝を合わせた形の仕事をしています」

アイドルとして8年半活動し、現在はアイドルを運営側から支えている。少女時代はアイドルになりたかったわけではなかった。

「親がオーディションのチラシを見つけてきて、そこに衣装代やレッスン料が不要と書いてあったんです。ダンスは小学2、3年生くらいからやっていて、(中日ドラゴンズの公式パフォーマンスチーム)『チアドラキッズ』をやっていたので、かわいい衣装を着られて、ステージまであって、レッスンも無料ってどういうこと? ってなって(笑い)。親も『いいね、応募してみようよ』とオーディションに行ったら、トントン拍子に…という感じでした」

中学1年生の時に、SKE48の6期生として加入。アイドル人生がスタートした。アイドル時代に特に印象に残っているのは、17年9月などに開催した同期とのZeppライブ。そしてもう1つは…。

「ナゴヤドーム(現バンテリンドームナゴヤ)での始球式です!(17年4月6日の中日-広島戦)。正直、センターになるとかよりうれしいかもと思ったくらいで(笑い)。元々好きだったことで、アイドルになってかなえることができるってすごいなと思って…。そのまま『チアドラキッズ』をやっていても始球式の経験はきっとなかったと思いますし、そう思ったらアイドルってすごいですし、アイドルになってよかったって、すごく思いました」

劇場公演や、握手会も大切なイベントだった。

「今に一番いきているのは、握手会。本当にいろいろな方とお話ししていく中で、人って1人ずつ違うんだなって。コミュニケーション能力もつきました。私、握手会が大好きで、今もやりたいくらいなんです(笑い)。お金を払ってまで会いたいって思ってくれるって、相当すごいことです。お金を払って球場に行ったら選手を生で見られる…みたいなことが、自分に起きてるって考えたら、絶対大事にしよう! って思っていました」

いつかはアイドルを卒業する時が来る。竹内の場合は、「憧れを抱いてたものを全部経験させてもらったからこそ、私の場合は、その中のどれかを極めようとかは思わなかったんです」と、芸能人としての道は考えていなかったという。

「ちょうど事務所がゼストに変わるタイミングで、当時の社長が劇場で説明会を開いてくれたことがありました。その時に『セカンドキャリアも応援していきます』という話をしていたんです。卒業を考えた時に、スタッフさんに『その話、もうちょっと詳しく聞きたいです』とお願いして、そこからお互い話をして、『ここで働くのが、今までのことも生かせるし、いいんじゃない?』と言っていただいて。『ぜひお願いします』と決まりました」

21年5月末にグループを卒業して、今度はアイドルを支える立場としての一歩を踏み出した。

「午前9時に誰よりも早く出社して、まずビル中の電気をつけたり、換気をしたりしています。午前中は前日から来ているメールをチェックするのがほとんどです。ランチして、午後になるとメンバーが掲載される各媒体の原稿チェックをしたり、ゲームのカードの写真を選んだりもするので、すごい量の写真を見ているというか、ずっとメンバーの顔と戦ってます(笑い)。あとはレギュラーラジオ番組の収録について行ったり、雑誌の取材に同行したりもします」

自分が育てられたグループで、今は「(メンバーとの)かけ橋のような存在になりたい」と汗を流す。7月5日には、新シングル「好きになっちゃった」の発売も控える。

「今のSKE48の魅力は、1つのグループとして一致団結できている部分です。誰を推しても『良い子!』っていう自信があるぐらい、みんな優しくて熱い子たちばっかりです。バンテリンドームナゴヤでのコンサートはずっと夢の場所で、今は2014年のステージを経験したことがあるメンバーが少ないので、もう1回、今のSKE48で立ちたいって思ってる子はたくさんいます。グループの中でも、カミングフレーバー、プリマステラといったいろいろなグループもできていますし、そこで大きいステージに立ちたいと言ってる子もいます。個々の名前がまた売れるグループになったらって思います」。【大友陽平】

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◆竹内彩姫(たけうち・さき)1999年(平11)11月24日、愛知県生まれ。小学生時代は、プロ野球中日のチアチーム「チアドラキッズ」に所属。13年2月、SKE48の6期生としてお披露目され、15年3月に正規メンバーに昇格。選抜総選挙は、第5回(13年)から圏外→外→外→31→56→51位。16年8月、シングル「金の愛、銀の愛」で初選抜入りし、選抜計8回。21年5月末にグループを卒業して芸能界を引退し、翌6月に「株式会社ゼスト」入社。血液型B。