J・J・エイブラムスの製作総指揮で、一昨年公開された「オーヴァーロード」は、戦争アクションにホラーがミックスされていた。一粒で2度おいしい作品は嫌いじゃない。

5月7日公開の「ローグ」の場合は対テロバトルに猛獣がからんでくる。

アフリカの無法地帯で息を潜める傭兵(ようへい)部隊。彼らはテロリストに誘拐された政治家の娘を救出するために派遣されている。圧倒的な兵力差を抜け目なくくぐり抜け、人質の救出に成功するが、脱出用ヘリとの合流に失敗し、近くの廃虚で一夜を過ごすことになる。

残された弾数はわずか。周囲は漆黒の闇で、猛獣が徘徊(はいかい)している。やがて凶暴なライオンによって、見張りに立った兵士が1人また1人と襲われて行く。そして、テロリスト軍団の追跡も迫り…。

赤道直下の夜間の暗さは体験したことがある。「少年ケニヤ」のアニメ化に際し、原作者・山川惣治さんの現地視察に同行してケニアのサバンナ地帯を訪れたのは84年のことだ。4、5日のテント生活だったが、周囲に明かりの無い夜の暗さは文字通りの漆黒だ。現地人のガイドは慎重にゾウの通り道を避けてテントを張り、たき火を絶やさなかったが、周囲の暗闇の中には何ものかの気配があり、生きた心地がしなかった。

劇中にも暗がりから突然ゾウの群れが現れるシーンが登場するが、「アフリカあるある」の実感がある。

個性的な傭兵たちを束ねるのがサムと呼ばれる歴戦の女性兵士。演じるのはモデルとしても活躍するミーガン・フォックス。顔もスタイルもちょっと良すぎる気がする。が、インタビューの発言が時に物議を醸す鼻っ柱の強さを目線の鋭さに反映し、タフで魅力的な兵士像を作り上げている。

サムは窮地をいかにして切り抜けるのか。ライオンはなぜ兵士たちを襲い続けるのか。M・J・バセット監督が娘のイザベラ(監督・脚本家)とともに書いたオリジナル脚本は良く出来ていて、密度の濃い1時間45分だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)