ブルース・ウィリスの敵役として「ダイ・ハード4・0」(07年)に登場し、キレキレのアクションを印象に残したのは、マギー・Qが28歳の時だ。

早いものであれから15年。この5月で43歳になった彼女が、変わらずというか以前にも増して切れ味鋭い動きを披露している。

「マーベラス」(7月1日公開)で演じるのは、復讐(ふくしゅう)に燃える暗殺者。拳銃でもマシンガンでも、そして変形ナイフでもすっと手になじませて、「正しく」使いこなす姿に説得力がある。格闘技の習熟度については知らないが、アクション女優としての才能は間違いなくトップレベルだ。

裏社会で長年トップクラスの暗殺成功率を誇るムーディ(サミュエル・L・ジャクソン)とアンナ(マギー・Q)のコンビは、アンナの少女時代にムーディが窮地を救った縁で親子のような信頼関係を築いている。が、ムーディはある日、組織的な襲撃を受けて殺されてしまう。

その組織がベトナムにあることを知り、アンナは単身乗り込む。立ちはだかるのが、護衛のプロ、レンブラント(マイケル・キートン)で、プロ同士の緊張感たっぷりのやりとりが最大の見どころになっている。

メガホンを取るのは「007 カジノ・ロワイヤル」(06年)で、ダニエル・クレイグにボンド俳優の道を開いたマーティン・キャンベルで、今作でも随所にその職人技が光っている。

高齢の域に差しかかっているジャクソンやキートンについては、マギー・Qとはひと味違う経験値の高い動きを付けて「貫禄」のようなものをうまく醸している。質感のあるセットや小道具を隙無く配され、スタイリッシュなアクションが際立つ。作家性を控え、俳優の魅力を引き出すことに注力する姿勢がこの作品でも感じられる。

エピローグ的な序盤の暗殺シーンが良く出来ていて、いきなりつかまれたと思ったら、1時間49分はあっという間だった。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)