「トップガン」の36年ぶりとなる続編「トップガン マーヴェリック」が大ヒット中のトム・クルーズが、3日に60歳の誕生日を迎えました。

1981年に公開された「エンドレス・ラブ」の端役で俳優デビューした後、「卒業白書」(83年)で注目を集め、86年公開の「トップガン」で大ブレイクしてスターの座を手にしたクルーズは、40年間にわたってハリウッドの第一線で活躍。「トップガン マーヴェリック」では本物の戦闘機に搭乗して撮影するなど体を張ったアクションに挑戦し続けており、今後は宇宙で撮影する計画などもあり、還暦を迎えてなお衰え知らずでハリウッドのレジェンドとして邁進し続けています。

そんなクルーズの軌道を代表作と共に振り返り、年齢を重ねるごとに増す魅力に迫ります。

誕生日にF1イギリスGPのサーキットを訪れたトム・クルーズ(ロイター)
誕生日にF1イギリスGPのサーキットを訪れたトム・クルーズ(ロイター)

■「アウトサイダー」(83年)

「ゴッドファーザー」(72年)や「地獄の黙示録」(79年)などで知られる巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督がメガホンを取った青春映画「アウトサイダー」では、まだ無名だった21歳の初々しいクルーズの姿が。貧困層と裕福層の若者たちの対立や絆、恋を描いた作品で、出番は少ないものの乱闘シーンなどで印象に残る演技を見せ、ワイルドな一面をアピールしています。

■「卒業白書」(83年)

初主演作となった「卒業白書」でゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされ、一躍ティーンのアイドルに。出世作となった今作で、クルーズがワイシャツにブリーフ、白ソックス姿でロックンロールに合わせて踊りまくるシーンは有名で、今も語り草です。

■「ハスラー2」(86年)

名優ポール・ニューマンと共演した「ハスラー2」は、巨匠マーティン・スコセッシ監督がメガホンを取った「ハスラー」(61年)の25年ぶりとなる続編。ニューマン演じる熟練ハスラーが、クルーズ演じる若きビリヤードプレイヤーに自身のテクニックを教え込む物語で、ビリヤードが大ブームとなりました。

■「トップガン」(86年)

通称「トップガン」として知られる米海軍のエリートパイロット養成学校の訓練生マーヴェリックを演じた「トップガン」が大ヒットし、クルーズはスターの仲間入りを果たします。当時の若者たちはカッコいい戦闘機乗りの姿に熱狂し、劇中で着用したレイバンのサングラスやフライトジャケット、滑走路を疾走するカワサキのバイクが大流行。世界中でクルーズ旋風を巻き起こしました。

「トップガン マーヴェリック」ジャパンプレミアでサングラスをかけレッドカーペットに登場したトム・クルーズ(22年5月24日撮影)
「トップガン マーヴェリック」ジャパンプレミアでサングラスをかけレッドカーペットに登場したトム・クルーズ(22年5月24日撮影)

■「レインマン」(88年)

大スターの仲間入りを果たしたクルーズは、「レインマン」では名優ダスティン・ホフマンと共演。アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞、ホフマンの主演男優賞の4冠に輝いた同作でクルーズは、絶縁状態だった父の死を発端にホフマン演じる自閉症の兄が遺産を相続することを知った弟チャーリーを好演。若手俳優を代表するスターへと成長を遂げていきます。

■「カクテル」(88年)

野心家の若きバーテンダー役に挑戦した「カクテル」では、イケメンのクルーズがド派手なカクテルパフォーマンスを繰り広げる姿が話題に。34年たった今見ても、キラキラ輝く「カッコいいトム」を堪能することができる作品です。

■「7月4日に生まれて」(90年)

オリバー・ストーン監督によるベトナム戦争を題材にした「7月4日に生まれて」では、愛国心を持ってベトナム戦争に参加するも挫折と苦悩を味わった青年を演じ、アカデミー賞主演男優賞候補に。受賞は逃したものの、この年のゴールデングローブ賞を受賞し、青春スターから俳優としての評価も高まった作品となりました。

■「デイズ・オブ・サンダー」(90年)

トニー・スコット監督がメガホンを取った「デイズ・オブ・サンダー」で共演したニコール・キッドマンと恋に落ちて結婚。当時すでに大スターだったクルーズに、オーストラリア出身のキッドマンが一目ぼれしたことがきっかけで交際に発展したと言われています。

■「ザ・エージェント」

敏腕スポーツ・エージェントを演じた「ザ・エージェント」で、2度目となるアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、名実ともに一流俳優としての地位を確立。金儲けだけを追求しているように見えるスポーツ・エージェントの世界で理想に燃える役どころを熱演し、共演した当時無名だったレネー・ゼルウィガーもこの作品で注目を浴びることに。

■「ミッション:インポッシブル」(96年)

現在シリーズ第7弾と8弾が制作中で、クルーズを代表する作品となった「ミッション:インポッシブル」シリーズでは、数々の危険なアクションにスタントなしで挑んできたことで知られています。

1作目の見所はなんといっても、CIA本部に侵入したクルーズ演じるイーサンの宙吊りシーン。宙吊りで落下しながら、床から数センチのところで止まるという難易度の高い撮影に挑み、その後の続編でも離陸する飛行機にしがみついたり、超高層ビルの壁面を登るなど危険度の高いアクションに挑戦し続けています。また、90年代から現在まで続く長寿シリーズとなった同作は、クルーズが初めてプロデュースを務めた作品でもあります。

■「アイズワイドシャット」(99年)

巨匠スタンリー・キューブリック監督の遺作となった「アイズワイドシャット」では、当時の妻だったキッドマンと2度目の共演で夫婦役を演じて話題に。倦怠期を迎えた夫婦を演じた2人の官能的なセックスシーンもありましたが、1年以上に及ぶ長期撮影を経て実生活での関係も変化。劇場公開から2年後に離婚しています。

■「マグノリア」(99年)

ロサンゼルスを舞台に一見関係のない男女9人の24時間を描いた群像劇で、クルーズはセックスカルトの教祖を演じてアカデミー賞助演男優賞にノミネート。フィリップ・シーモア・ホフマンやジュリアン・ムーアら豪華俳優陣との共演でも話題に。

■「ラストサムライ」(03年)

幕末を舞台に、政府軍に招かれて来日した大尉が武士道に魅了されて最後に侍になる役どころを演じた「ラストサムライ」では、渡辺謙や真田広之、小雪ら日本人俳優と共演。大の親日家として知られるクルーズの甲冑姿は必見です。この作品で渡辺はアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、一躍ハリウッドで脚光を浴びることとなりました。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)