パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの紛争を巡り、ハリウッドが揺れています。オスカー俳優ホアキン・フェニックスや女優ケイト・ブランシェット、ジェシカ・チャンステインら多くのハリウッドセレブが、バイデン大統領に宛てた公開書簡で即時停戦を働きかけるよう訴える一方、イスラエル出身で従軍経験もあるガル・ガドットのように明確にイスラエルを支持するセレブもいます。また、パレスチナの現状を訴え、批判を受けたセレブもいます。

パレスチナにルーツを持ち、パレスチナ解放を支持するモデルのジジ・ハディッドは、SNSで「罪のない命が奪われていく。多くは子どもたち」などと紛争に心を痛めていることをつづって、ガザ地区の現状に言及。パレスチナの紛争や占領下の生活に深く同情し、傷心しているなどと投稿した声明に対し、イスラエル政府は名指しで「この1週間寝ていたの?」と反論。本人のみならず家族の元にも殺害予告が届くなど、誹謗中傷が殺到する事態となりました。

長らく国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)特使を務めてきたアンジェリーナ・ジョリーも、ガザ地区の難民キャンプにできた空爆による巨大なクレーターの写真をインスタグラムに投稿。「ガザ地区は集団墓場になりつつある」「罪のない人々の命が失われることを正当化することはできない」とつづって即時停戦を求めましたが、イスラエルの大統領から「現場に実際に来たことがあるのか」と批判を受けました。

アンジェリーナ・ジョリー(2019年10月撮影)
アンジェリーナ・ジョリー(2019年10月撮影)

発言内容が反ユダヤ主義だとしてエージェントとの契約を解除されたり、新作映画から降板させられたセレブもいます。オスカー女優スーザン・サランドンは、ニューヨークで行われた親パレスチナ集会で「多くのユダヤ人がユダヤ人であることを恐れている。この国でイスラム教徒であることが、どのようなものなのか味わい、頻繁に暴力にさらされている」と演説して炎上。米国に住むユダヤ系のみならずイスラム教徒からも批判の声が上がり、大手エージェントから契約を解除されたと報じられています。

また、メキシコ出身のメリッサ・バレラも、ガザは強制収容所のようだとSNSに書き込み、「大量虐殺で民族浄化」などと投稿したことから、主演する映画「スクリーム」シリーズの最新作から解雇されています。バレラはその後、「あらゆる種類の憎悪と偏見を非難する」「これ以上の死者がでないこと、暴力行為が行われないことを願う」など投稿して反論。反ユダヤ主義とイスラム嫌悪を非難するとのスタンスを示し、「沈黙するという選択肢は私にはない」と述べて平和的共存を願う気持ちをつづっています。

そんな中、トム・クルーズら多くのクライアントを抱えるハリウッドの大手エージェンシーCAAの映画部門共同責任者であるマハ・ダヒルさんが、パレスチナ解放を支持する投稿をシェアしてイスラエルによる虐殺を非難し、職を解かれたことが伝えられています。しかし、クルーズ自らオフィスを訪れ、ダヒルさんへの支持を表明して処分に反発。クルーズがダヒルさんへの連帯感を示したことで、責任者の職から外された後もエージェントとしてクルーズを含むクライアントと仕事をすることが認められたといいます。

トム・クルーズ(2022年5月撮影)
トム・クルーズ(2022年5月撮影)

大物スターが苦境に立たされた代理人のために直接出向いて支持を示すのは珍しいことだと報じられていますが、ハリウッドでは今も多くのセレブがこの問題を静観しており、そのこと自体を非難する声もあります。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)