先週末からニッカンスポーツ・コム芸能記事アクセスランキングの上位をしめる、2つの会見関連。20日に行われた雨上がり決死隊の宮迫博之さんとロンドンブーツ1号2号田村亮さんの謝罪会見と、22日に行われた吉本興業岡本昭彦社長の会見です。面接や面談など、質疑応答の場面は就活生やビジネスパーソンにもありますので、トークの観点で考えていきます。トーク編第47回、「2つの会見から見る質疑応答」。

トークレッスンで講義する五戸美樹(2019年7月)
トークレッスンで講義する五戸美樹(2019年7月)

■自分だったらどう言うか■

トークは、「自分だったらどう言うか」を考えることでスキルの向上を狙えます。テレビもラジオも、無意識に見たり聞いたりするのではなく、あえて意識的に、真似したいところや変えたいところを考える、そうすると、テレビもラジオも無料の教材になります。

例えば、バラエティ番組で芸人さんがうまい切り返しをしていたら、「こうやって話題を展開する方法もあるんだ」と考え、情報番組でコメントを求められているタレントさんがいたら「自分だったらこんな話をするな」とメモを取る…ずっと気にしていると疲れてしまうかもしれませんが、1日5分などと決めてメディアに触れる方法はおすすめです。

■過去の面接は見られないが■

大学3年生は、本格的な就職活動シーズンに向けて、インターンシップの募集やその説明会が開かれる時期になりました。書類と面接、どちらも大事ですが、書類は先輩のエントリーシートを見て参考にすることはできても、面接は過去行われたものを見られることはほとんどありません。そこで、就活以外で、質疑応答の参考を考えるとします。質問に答える瞬間を誰もが見ることができる場所…会見です。

■自分だったら全て話せたか■

宮迫博之さんと田村亮さんの会見をネット配信で全て見ましたが、もし自分だったら、あんなに真摯に正直に、話すことができただろうかと思います。気になったのは、わかりにくい質問をする記者の方がいらしたことです。質問を端的にしてほしいところ、記者の方ご自身の感想を述べられ、「それについてはいかがですか?」と聞かれると、質問が何だったのかわかりません。宮迫さんは「もう一度よろしいですか?」と、何の質問だったのか聞いていて、その姿も非常に誠実に見えました。

ラジオ日本・CM収録スタジオにて
ラジオ日本・CM収録スタジオにて

■自分だったら端的に答えられるか■

一方、吉本興業岡本社長の会見は、5時間という異例の長さで全ては見ていませんが、冒頭から2時間を見たところ、もし自分だったら、もっと質問に答えることを重視するように思いました。「事実か、事実でないか」の質問に対して、その前の出来事から振り返り、長くなり、結局事実なのか事実でないのか、よくわからない…今回の会見に限らず、政治家の答弁でも見受けられる応対です。

■質問に答えることを重視する■

質疑応答で大事なトークスキルは、「質問に答えること」です。当たり前のようでいて、これがなかなか難しい。面接で、「なぜ人は働くのか?」など、用意をしていない質問が来ると、答えに窮して、「ああでもない、こうでもない」と言っているうちに、質問がなんだったか忘れてしまう…私も経験があります。

■質疑応答の優先順位■

大事なのは、まず「質問に答えること」と考える、そうすると優先順位が見えます。答えを短く伝え、それから説明を足せるようになります。また、わからないことは「わからない」、知らないことは「知らない」と言えるようになります。堂々と「わかりません!」と言うのではなく、「すみません、勉強不足でわからないのですが…」などと言えば大丈夫。

そして、質問の意味がわからない時は聞き返すことができるようになります。上記「なぜ人は働くのか?」であれば、「自分は、でいいでしょうか?」と聞き返すなど。その後「生きがいだからです。それは…」と理由を足すことができます。

J-me公式キャラクター「ジェイミー」とJ-WAVE社屋にて
J-me公式キャラクター「ジェイミー」とJ-WAVE社屋にて

会見を見て「自分だったら」と考えるのは決して不謹慎ではなく、「自分だったら」を考えることで客観的になれたり、評価や批判についても考えがまとまります。今年はイチロー選手の引退会見もあり、イチローさんらしい、見事な質疑応答だったことを思い出します。(この会見も質問にわかりにくいものが多く気になりました。記者の方は会見を見る時、「自分だったらどう質問するか」を常に考えていただけると、もっと会見の質が上がると思います)

【五戸美樹】(ニッカンスポーツ・コム芸能コラム「第71回・元ニッポン放送アナウンサー五戸美樹のごのへのごろく」)