落語協会(柳亭市馬会長)に新しい真打ちが誕生する。柳家さん生門下の柳家わさび(39)、柳家さん喬門下の喬の字あらため柳家小志ん(41)、初音家左橋門下の初音家左吉あらため古今亭ぎん志(44)、柳家権太楼門下のほたる改め柳家権之助(42)の4人で、先日、都内で真打ち昇進の会見と披露宴が行われた。

わさびは、11年公開の映画「落語物語」に落語家役で主演したことがあり、その時に師匠役を演じたのがピエール瀧だった。9月6日に昇進祝いの落語会を行うことになり、昨年秋にメールでピエールに落語会の出席を依頼し、快諾を得ていた。しかし、「今年になって捕まってしまった。呼ぶという行為が出来なくなった」と嘆いた。

小志んは18歳の時から介護士の免許を持って、老人ホームのデーサービスなどで働いていた変わりダネ。さん喬のもとに弟子入りした時も背広に黒かばんを持った姿で、さん喬も「保険の勧誘かと思った」と苦笑い。小志んは5代目で、先代は曲芸の人だったが、6代目柳家小三治も名乗っていた由緒ある名前。「身の引き締まる思いがします」。

ぎん志も理学療法士などの資格を持ち、ブルーハーツなどロックが大好きで、前座時代からリーゼントの髪形を変えていない。古今亭志ん生が「ぎん馬」を名乗っていたことから、その「ぎん」と志ん生の「志」をもらって、「ぎん志」に改名したという。「ぎんぎんぎんにさりげなく、やっていきたい」。

権之助は28歳で入門した。それまでは親のスネをかじり、ピアノの調律師などもしていたという。小学6年の時に初めて聴いた時からアルフィーの大ファンで、特に坂崎幸之助を尊敬しているという。今回の改名でも、師匠の「権」と坂崎の「之助」をつなげて、「権之助」にした。「坂崎さんに許可を取りに行ったら、快諾してくれた。真打ち披露興行の後ろ幕も作ってもらいました」。

会見には師匠たちも同席した。さん生は「入門当初は、わさびの母が毎日ついてきたので、内弟子にした。我慢することを覚えし、いい経験をしたと思う」。さん喬は「お客さんにも誠実に付き合っている。真面目で。小言も言いやすいので、一番身近に感じる弟子です」。左橋は「髪形で、周りから『よした方がいいよ』と言われても変えなかった。自分のシンを通す男です」。権太楼は「私はこの子が好きで、一番のファン。見ているだけで楽しい。人間が面白ければ。落語は後からついてくる」。それぞれが弟子にエールを送りました。

真打ち昇進披露興行は9月下席の上野の鈴本演芸場から始まり、新宿末広亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場と続きます。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)