人形のような青い瞳に、鼻はツンとして形がいい。近寄りがたい空気を漂わせるエイミー・アダムスを、ファッションCMのとがった映像で知られたトム・フォード監督がじわじわといたぶるように撮っている。

 裕福な夫に自身はアートギャラリーを経営。物質的には恵まれながら、心は満たされない女(アダムス)のもとに前夫(ジェイク・ギレンホール)から小包が届く。中身は未発表の小説。ある家族の悲劇がひりひりするような筆致で書かれていて、捨てた前夫が才能を開花させたことを知る。

 映画は現在と過去に小説を劇中劇として加え、3本のより糸のように展開する。小説は前夫からのラブレターなのか、復讐(ふくしゅう)なのか。心をえぐる小説に動揺はしだいに大きくなり、女は必死に取り繕う。アダムスの抑制の利いた演技には感服する。

 小包を開ける女が紙で指を切る不穏な導入エピソード。小説がつづる恐怖は彼女の現実の不安と見事にリンクしていく。

 ギャラリーや劇中劇に予想外のアングルで登場する女性の裸体はアートのように美しい。長編映画2作目のフォード監督は嫌というほど才能を見せつける。【相原斎】