80~90年代を代表する米女性歌手、ホイットニー・ヒューストンの劇的な生涯を浮き彫りにするドキュメンタリー映画。栄光と転落のギャップが激しく、かなりヘビーな内容だ。生い立ち、家族、結婚、薬物中毒…。知れば知るほど切なくなった。

幼いころから教会の聖歌隊に加わり、基礎からゴスペルを学び、20歳のときに歌手デビュー。どこまでも伸びる圧倒的な歌唱力は世界の人々を魅了し、主演映画「ボディガード」(92年)の成功によって富と名声の頂点を極めた。米歌手、ボビー・ブラウンとの結婚を境に、薬物中毒や夫の暴力で一気に転落。7年前、48歳という若さで不慮の死を遂げた。

背景に何があったのか。アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞受賞作「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」などを手がけたケビン・マクドナルド監督は、膨大な映像記録を丹念にリサーチ。家族、友人、仕事仲間から赤裸々な証言を引き出す。少女時代の衝撃の新事実も明かされる。証言が事実かどうか。緻密な裏取り作業を重ねて真実をあぶり出す。歌姫の「歴史」は物悲しくもあるが、見応えは十分だ。【松浦隆司】

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