北野武監督8年ぶりの新作は、03年「座頭市」以来20年ぶりの時代劇だ。93年の「ソナチネ」と同時期に構想して30年、温めてきた企画で、19年12月には自身初の歴史長編小説として原作を書き下ろし出版した。

原作は、上方落語の祖と言われる元甲賀忍者の曾呂利新左衛門が、羽柴秀吉と千利休に雇われ謀反人を探し戦国の世を渡る物語だ。一方、映画は織田信長が跡目をエサに謀反を起こした家臣・荒木村重の捜索を命じたことをきっかけに明智光秀、秀吉、徳川家康ら家臣の欲望と策略が入り乱れ、本能寺の変まで向かう流れを独自の解釈で描いた。

北野監督は企画にあたり、宣教師のフランシスコ・ザビエルが残した資料を読み日本で男色が庶民にも広がっていたことを知ったと説明。「日本の時代劇は、NHK大河のような表面的な戦国時代の引用。男同士が絡み合うのを避けるところがあるが、殿様に命をかけるのはそういう関係。描かないのはおかしい。自分の映画は正しいか正しくないか、ではなく表面上、あまり描かないことを意識して映画化した」と強調した。

キタノブルーと称される美しい色づかい、代名詞とも言うべき暴力表現、日本を代表するお笑い芸人ビートたけしの真骨頂とも言える笑い…それらが融合し昇華した集大成とも言える作品だろう。それだけに、監督自ら公開前に配給のKADOKAWAを批判するなど、作品の本筋とは関係ない話をメディアで展開していることが、観客に余計な先入観を与えてしまうのではないかと残念でならない。【村上幸将】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)