昨年大みそかに生放送された「第76回NHK紅白歌合戦」第2部(午後9時)の平均世帯視聴率は、関東地区で35・2%(ビデオリサーチ調べ)だった。3年ぶりに35%を突破した。
瞬間最高視聴率は40・7%(白組の優勝が発表された午後11時44分)で、こちらも5年ぶりに40%台に回復した。
放送100年の年で、各年代層のトップアーティストが集結した結果が反映されたのだろう。
もっともSNS上では、司会陣(有吉弘行、綾瀬はるか、今田美桜、同局鈴木奈穂子アナウンサー)への厳しい声も聞かれた。曲紹介で沈黙があったり、妙な間が散見された。
もちろん、すべて司会陣の責任ではなく、特別企画など『本編』とは違う演出が多々あったことも一要因だろう。
紅白には数々の演出上の転換点があった。
69年の第20回では、それまで舞台袖にあった歌手席が、ステージ上に設置された。すべての歌手がステージ上の階段式の長いすに座って、歌う際もそこからスタンドマイクに向かったり、有線マイクで歌唱した。大トリの女王・美空ひばりも着物姿で座り続けた。(当時の放送時間は2時間45分)。テレビには歌手の一挙手一投足が、リアルタイムで映し出された。
司会は紅組が伊東ゆかり、白組が坂本九で、総合司会は同局の宮田輝アナウンサーが務めた。曲紹介やインタビュー、応援合戦など、司会陣の役割はステージ上で『完結』できた。この演出は長くは続かなかったが、視聴者にとっては新鮮だったろう。
時代が進み、12年の第63回で、第1回からずっと続いていたフルバンドによる生演奏がなくなった。自前のバンドで歌う歌手以外は、事前に伴奏を録音し、カラオケ方式で歌唱することになった。
前述の第20回ではステージ上で、紅組は前半が原信夫とシャープス・アンド・フラッツ、後半が小野満とスイング・ビーバーズ。白組は前半が有馬徹とノーチェ・クバーナ、後半が宮間俊之とニュー・ハードが生演奏した。
その後、ステージ下のオーケストラピットでの演奏。しばらくしてNHKホールに近いスタジオで生演奏し、専用回線で届ける形に変わっていた。
生演奏がなくなった背景には、LEDスクリーンなど最先端技術を投入した映像演出で、歌唱と映像を一体化させるには事前収録が適しているからだ。
最先端ではあるが、それだけ演出は複雑となる。加えて別会場からの中継、バンドが歌う際のセッティング、多人数によるスペシャルステージなど、舞台転換が連続する。
そんな紅白の司会を取り仕切るには、1、2回のリハーサルでは厳しいだろう。批判されている司会陣の微妙な「間」は、必死さの表れ、かもしれない。(敬称略)【笹森文彦】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「歌っていいな」)





