“面白い”が一番。役者やタレントとして幅広く活躍する小池栄子(42)が忘れずに持つ信条だという。18日には民放GP帯(午後7時~11時)連続ドラマ初主演となる日本テレビ系「コタツがない家」(水曜午後10時)もスタート。記念の一作への思い、10代でのデビューから円熟期の40代で感じること、そして表現者としての生きざまを聞いた。【松尾幸之介】

★どんなことでも楽しめる

誰もが認める活躍を続けている。小池は「ようやく落ち着いて安定しながら仕事できるようになったのはこの2、3年かな」と語り「よりチャレンジという大胆さは大事ですけど、ひとつひとつコツコツに尽きるなと40代になって特に思い始めました。与えられた仕事をしっかりと丁寧にこなしていくことが大事だなと今思っていますね」と心境を明かした。

現在は役者業をはじめ、バラエティー番組やCM出演など仕事の幅は広い。原動力のベースは「どんなことでも楽しめる」という対応力だ。人との対話など「人間が好きなんですよね」と笑い「自分と考え方が違う人と話すとか、ご飯に行っても、そこで全然知らない人と飲むのが苦じゃないタイプなんですよ。芸能という狭い世界で仕事していると全く違う仕事している人と話すのが楽しくて。いろんなことを吸収して自分も膨らませていますね」。

今回主演を務める「コタツがない家」は、そんな普段の小池の姿も投影したような“笑って泣けるネオ・ホームコメディー”作。19年に出演した同局系ドラマ「俺の話は長い」で向田邦子賞受賞の金子茂樹氏が脚本を担い、同じスタッフが再集結して届ける。演じるのは家族を力強く支える44歳の“伝説のウエディングプランナー”にして経営者の深堀万里江役だ。

「私のことをよくわかってくれているチームで、委ねたら面白くできるんじゃないかなと思いました。最初は驚きと不安でいっぱいでしたが、家族が主演みたいな感じで、みんながよく出てくるので。今はとにかく早く見てもらいたいなと思っています」

万里江が家庭で支える父、夫、息子の“ダメ男”三人衆は小林薫(72)、吉岡秀隆(53)、HiHiJets作間龍斗(21)が演じる。「ダメ男と私みたいな構図にはなってますけど、世の男性から見たら『こんな母親だからこんな風に言いたくなるんだよ』っていう意見もあるだろうし、女性は『よくこんなダメ男と離婚せずに一緒にいるね』みたいな、見ている方の立場、育った家庭環境で全然違う楽しみ方ができると思います」と話す。

現場の雰囲気も良いといい「めっちゃ楽しいですね。正直、小林さんや吉岡さんはもっと気難しい部分もあるのかなと思っていたんですけど、全然偉ぶらず怖くもないですし、前室でもセリフ合わせをしてくださったり。『こうしたら面白くない?』とか会話をしてくださる先輩方です。作間君も最初は緊張してると言っていたけど、今は一番大人に見えるくらいです。想像していたものと実際に顔を見てやるのは違うなというのは面白いですね」。

私生活では元プロレスラーで現在は小池の個人事務所代表を務める坂田亘氏(50)と07年に結婚。ドラマには金子氏に小池が語った普段の夫婦生活の要素も組み込まれており、出演決定時は「これは万里江であり小池栄子の物語なんだと思ってしまうほどです」と心境を明かしていた。

話は夫の“ダメ男”だと感じる部分にも及び「この前、家にゴキブリが出た時に『栄ちゃんゴキブリだよ』って報告はするけど、とってくれないわけですよ。彼は(ペットの)犬をまず保護して『ほらほらほら』って。いつもスプレーで撃退するんですけど、その時はなくて『じゃあティッシュしかないな!』って言っていて。『いや、お前がやれよ』と(笑い)。似たようなシーンがドラマにもあるんですよね」。

エピソードは尽きない。「この前も犬がトイレに大きい方をした時、『してるよ』っていちいち知らせてきて。きっと私がやってくれるだろうって甘えるわけですよ。最近、父親にも思いますけど、大きい息子だなと。(夫とは)同棲(せい)含めたら出会って20年ぐらい。息子を1人成人させたぐらいなので、本当は巣立っていってもらいたいぐらいですよ(笑い)」と軽快に笑った。

それでもドラマの3人含め「ダメさは違いますけど、しょうがないなと許してしまう部分は似ている」という。「私は家族になった以上よっぽどのことがないかぎり手を離したくないタイプ」とも語り「向き合って闘って、傷を負いながら家族の形をつくっていくことが理想なので。どうせ一緒になったんだったら立ってられないくらいしんどい本当のギブ(アップ)まで頑張るみたいな。プロレスラーと結婚したからか、その精神は似てきたのかもしれないですね(笑い)」。

★「突っ込まれるのも込み」

まだまだ目指したいこともある。「50歳で(NHKの)朝ドラヒロインをやりたいというのはずっとひそかな目標」と明かした。

「突っ込まれるのも込みです。これまでもベテランがやることもありましたし、そういう時が10年に1回くらいあってもいいんじゃないかなと少し思っていて。去年、大河ドラマで1年半の撮影を経験して、長くひとつの役にまた携わりたいとさらに感じました。自分は難しいと感じることにチャレンジすることが好きなタイプなんだなと再確認できましたし、本当は結構、慎重派でビビりな部分があるんですけど、あの1年半で強くなりましたね」

周囲ではグラビア時代から苦楽を共にしたMEGUMI(42)がドラマプロデューサー兼演者としても活躍するなど同世代の活躍にも刺激を受けている。

「この前もご飯食べた時に尊敬しているよと伝えました。私は0から1を生み出すことは苦手で自分にないものができているというのはすごくうらやましい。アドバイスを求めたくなる存在なんですよね。私、フジテレビの(トーク番組)『はやく起きた朝は…』の松居直美さん、森尾由美さん、磯野貴理子さんの3人の空気感が好きで。ああいうのをメグちゃんやサトエリ(佐藤江梨子)とか同世代メンバーでまた何か特番でもいいのでできたらいいなと思っています。一定の層の人たちは見てくれそうですよね?(笑い)。共演NGでもないので、企画がきたらいいですね」

常に笑いを差し込むトークに引き込まれ、あっという間に時間はたった。表現者として大事にしていることも“面白さ”だという。

「私の名前を見た時に何か面白そうだな、テレビつけてみるかみたいな。ワクワクする人でいたいなと。大泉洋さん大好きで、仲良くなったのも面白いが一番という考え方で意気投合したからです。芝居に限らず表現者として『小池栄子面白そう』という存在でずっといきたいです」。

安定のその先へ。見ていて楽しい欠かせない存在を目指し、これからも闘っていく。

▼「コタツがない家」櫨山裕子プロデューサー

(小池は)とてもポジティブ。おおらかに見えて実は周りへの気配りがすごい。バラエティー的な反射神経と演技のスキルが両立する女優さんってあんまりいないのだが、彼女は稀有(けう)な存在だと思う。今回が意外なことに連ドラ初主演となるが、私にはいつもと変わらない感じに見える。それを初共演の吉岡秀隆さんが「小池さんの座長感がすごい」と評していて「小池さんは生まれながらの女座長なのかも」と思ってしまいました。

◆小池栄子(こいけ・えいこ)

1980年(昭55)11月20日、東京都生まれ。98年「美少女H」でドラマデビュー。グラビアでも活躍。22年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では北条政子役で、広く大衆に支持された役者に贈られる橋田賞を受賞。フジテレビ系「芸能人が本気で考えた!ドッキリGP」やTBS系「クレイジージャーニー」、テレビ東京系「カンブリア宮殿」などレギュラー多数。167センチ。血液型AB。