月組トップ月城かなとが、若き日の菅原道真に共感を抱きつつ、臨んでいる。月組公演「『応天の門』-若き日の菅原道真の事-」「Deep Sea-海神たちのカルナバル-」は、4日に兵庫・宝塚大劇場で開幕。昨年末、全国ツアー千秋楽翌日に、福岡の太宰府天満宮へも参った。ショーでは相手娘役の海乃美月と、タンゴでのデュエットも披露している。宝塚は3月6日まで、東京宝塚劇場は3月25日~4月30日。

トップ1年が過ぎ、自然体で組を率いる月城かなと
トップ1年が過ぎ、自然体で組を率いる月城かなと

月城は23年初作品の芝居で、学問の神様とたたえられる菅原道真にふんする。

「頭が良すぎて、神様になるって、どういうこと? って(笑い)。道真の少年、青年時代が描かれている漫画を読んで、それは物事の真実を見抜く力かな、と。(常人とは違う)側面から物を見ることができる。そういう頭の良さ、賢さに、人はあこがれ、あやかりたいと思うんですね」

平安の色男・在原業平とタッグを組み、怪事件を解決していく。灰原薬氏の人気コミック「応天の門」を原作に描かれている。

「灰原先生の描かれる絵は線が太く、伸びやか。それを見て、役作りもこんなふうに迷いなく、太い線で、輪郭を描いていきたいと思いました」

業平は、3期先輩の人気スター鳳月杏がふんする。

「漫画の帯に『平安の最強バディ』って書いてありまして、すごくおもしろい表現。2人で、ぶつかり合い、解決していく凸凹感。タッグを組んだとき、自分以上の力が出るバディ感が出せるように頑張りたい」

群を抜く美貌と、若手時代から落ち着いたたたずまいでクラシカルな男役が似合う。原作のビジュアルも研究した。

「(鋭い)目ですね。理想と現実のギャップへの葛藤、不満…。それが目つきに出ているのかな。メークで表現できるよう調整し、目を効かせられるように」

前作の全国ツアーは福岡で千秋楽を迎え、終了翌日、道真を祭神としてまつる太宰府天満宮へ参った。

「本堂の下が道真さんのお墓ですよ-と、教えていただいて。ここにいらっしゃるんだと思うと、お願いする、祈る、というより、ごあいさつをさせていただく気持ちの方が大きかったです。『心をこめて演じさせていただきます』とご報告をしました」

月城自身、勉強は「好きなことはいくらでも頑張れる。英語は好きで、成績がよかった」という。おりしも、宝塚音楽学校も受験シーズンに入る。

「最近うれしいのは、『私を見て(宝塚を)目指しました』と言ってくれる子がいるということ。受験生の時は思いもしてないことで、不思議であり、ありがたく、申し訳ないような。でも、ここまでやってきて良かったとも思います」

ラテン調のショーは「深海」がテーマ。

「ただ発散するだけじゃない、深海というテーマがあるのが、(芝居に定評がある)月組らしい。演じがいがあります。お客さまを海の底にお連れする。そこが新しい試みでもあり、いつものラテンショーとはひと味違うと思ってもらえるのでは。自分の宝塚人生の中でも、印象的な作品になるのではないかと思います」

海乃との大人のトップコンビ。デュエット場面はタンゴで「感情がぶつかり合うような振り付け」とも語る。

昨年正月のトップ本拠お披露目から1年。「強くなったなと思います」と口にした。本来くよくよするタイプではないそうだが、トップ就任後は「やはり責任の重さなどいろいろなことを自分で考えすぎ、とらわれすぎていた」と言う。

「でも落ち込むより、切り替えて次にいこうと思うように。そこが一番大きな変化。1年間もがいた結果です。たとえうまくいかないことがあったとしても、今日は今日のできることをして、また明日(必要なら)変えればいい」

変化、変わることも前向きに感じるようになった。稽古場で演出家らからのアドバイスや指摘に戸惑う組子には「目的は、舞台で皆さんにいいものをお見せする」ことと助言する。自身も「そのための稽古。私自身『変える』ことを受け入れられる人でありたい」と心に刻み、励んでいる。

今年のキーワードには、「飛び込む」をあげた。

「ショーの開演アナウンスの後、私が『ダイブ!』と言い、人間が海に飛び込む映像が流れてスタートします。そこから深海に向かっていくんですけど、今年は『飛び込む』をキーワードに頑張ろうと思います」

新しい1年の始まり。自身にも、月組にも「大きな挑戦」と感じる作品になった。「ちゅうちょせず」との言葉を添え、仲間とともに未知の大海原へ飛び込んでいく。【村上久美子】

月組23年最初の本拠地作で菅原道真役に臨む月城かなと
月組23年最初の本拠地作で菅原道真役に臨む月城かなと

■絶対いい1年に

昨年の正月は本拠地お披露目、今年の正月は鏡開きに参加した。集まったファンから「願い」「祈り」を感じたという。普段の壇上からのあいさつとは違い「皆さまの顔もよく見えました。『今年はいい1年に』『無事に公演して』という熱い思いを感じました」。ファンの気持ちを受け「大丈夫。絶対いい1年になりますよって思いでいました。舞台でお返ししていきたい」と話している。

◆平安朝クライム「応天の門」-若き日の菅原道真の事-(原作=灰原薬「応天の門」新潮社バンチコミックス刊、脚本・演出=田渕大輔) 学問の神様と称される菅原道真が、平安の色男・在原業平と組み、都で起こる怪事件を解決する様を描く歴史サスペンス。17年に文化庁メディア芸術祭マンガ部門で新人賞を受賞するなど、評価の高い歴史漫画が原作。舞台は平安初期。京の都では、「百鬼夜行」の姿を見た者が殺されるという怪事件が頻発。文章生・菅原道真(月城かなと)は、検非違使(けびいし)の長・在原業平(鳳月杏)の捜査に協力することになる。彼らに協力する勝ち気な女商店主・昭姫(しょうき)に海乃美月。

◆ラテングルーヴ「Deep Sea-海神たちのカルナバル-」(作・演出=稲葉太地) 海底神殿に集う海神たちが繰り広げる情熱のカルナバルを描くラテンショー。

☆月城(つきしろ)かなと 12月31日、横浜市生まれ。09年入団。雪組配属。13年「Shall we ダンス?」で、新人公演初主演。17年2月、月組。18年、東上初主演し、同年「エリザベート」でルキーニ。21年は、春日野八千代さん初演の「ダル・レークの恋」に主演し、同年8月16日付で月組トップ。95期から3人目トップに就き、相手娘役に海乃美月を迎える。昨年1月「今夜、ロマンス劇場で」で、本拠地お披露目。身長172センチ。愛称「れいこ」。

◆おことわり 公演日程については変更の可能性があります。最新情報は、宝塚歌劇団の公式ホームページなどでご確認ください。