ピアニスト西村由紀江(49)が18日、大阪市内で日刊スポーツの取材に答え、デビュー30周年記念アルバム「~Beautiful Days~」(7月27日発売)をPRした。桐朋音大ピアノ科在学中にデビューして以来、400以上の自作曲をCDとして世に出し、本作が39枚目を数える。30年というキャリアの中で出会い影響を受けた人や作品などから、13曲を厳選して「自分史」のような1枚にまとめた。「構想2年、気合を入れた。30年と言っても色々な出会いがあって、協演したい人、収録したい曲をエクセルに書き込んだ。そこからピアノ人生という基準で選んだ」。

 例えば、2曲目の「カバレフスキー ソナチネ Op13-1 第一楽章」は、西村が6歳のとき好んで弾いていたロシアの作曲家の楽曲だ。「子どもながらにバッハではなく、ユニークなカバレフスキーが好きだった。ひねくれていたのかも」と笑顔で振り返るが、大切な1曲だ。

 「元々極度の人見知りだった。学校でうまくコミュニケーションできなかった日、その悔しさをピアノを弾くことで収めていた」。鍵盤に向き合う中、幼くして才覚を現し、8歳でタイへの演奏ツアーに参加したり、14歳でチェコから来日したチェリストと自身の曲で協演する機会に恵まれた。「色々な人に出会い、様々な経験をすることで変わっていけた。躊躇することや自信がない部分を周囲に支えてもらったり、元気付けてもらったりした」。

 アルバムには、今年亡くなったデビッド・ボウイさんの「スペース・オディティ」や

大学時代に影響を受けた「コーリング・ユー」など名曲のカバーが続く。生前交流のあった作曲家・宮川泰さんの代表曲のメドレーや、自身の名を世に知らしめたドラマ「101回目のプロポーズ」の挿入曲「夢を追いかけて~薫のテーマ~」など耳馴染みのある旋律が続く。西村を励まし、世界観を構成する要素を確認できる。

 00年からは病院でのチャリティーコンサートや、11年東日本大震災から始めた被災地にピアノを届けるプロジェクト「スマイルピアノ500」など慈善活動にも力を注ぐ。「私は自分から手を挙げる積極的な人間ではないかもしれない。活動のきっかけは全てその時々で出会った人との縁。自然な流れで続けています」。アルバム11曲目に収められた「朝日の当たる家」は岩手県陸前高田市の交流拠点の名前で、西村が交流を続ける被災地の人々を想い、作ったスケールの大きな名曲だ。「私は地道に続けることが好きで、得意なのかもしれない」と力を込める。

 活動の幅は広がる一方だが、「その方が曲作りのインスピレーションが沸く」と前向き。何より敬愛するピアノへの感謝を示した楽曲「Dear ピアノ」を1曲目と最終13曲目で挟み込みアルバムを完成させた。「30年というのはデビュー作品をリリースしてからの時間に過ぎない。私のピアノ人生はその前から始まっているので通過点」とサラリと口にした。

 新アルバム発売記念イベントを20日13時半から大阪市西区のヤマハミュージック大阪なんば店で開催する。コンサートツアーは大阪公演が10月9日に地元豊中の豊中市立アクア文化ホールで、東京公演は10月22日に日本橋三井ホールで行う。