宝塚歌劇団花組トップ、明日海(あすみ)りお主演の「ミュージカル・ゴシック ポーの一族」が1日、開幕した。当代きっての美形トップが、永遠の命を持つ「美少年バンパネラ(吸血鬼)」にふんし、萩尾望都氏の傑作漫画を初舞台化。昨年12月30日の公開稽古には、萩尾氏も見学に訪れ「頭も心臓もバクバクが止まらない。(自身の)漫画から抜け出たよう」と興奮していた。

 今作は、72年「別冊少女コミック」に第1作を発表以来、幅広い読者に愛される傑作漫画が原作。バンパネラ一族に加わったエドガーが、時空を超え旅する様を描く。

 演出の小池修一郎氏は、32年前から萩尾氏に舞台化を申し入れ、今回「純粋さと魔性」をあわせもつ明日海主演でやっと実現。「エリザベート」「スカーレット・ピンパーネル」など、劇団代表作を多く手がけつつ、夢をあきらめなかった32年を「すべては、この時のために用意されていた」と表現した。

 明日海のキャラクターが主人公と合致、主人公の親友となるアランには、圧倒的な華やかさを持つ柚香光(ゆずか・れい)の個性がピタリとはまった。

 昨年末の公開稽古後には、萩尾氏、小池氏とともに、明日海、柚香と、トップ娘役仙名彩世(せんな・あやせ)が取材会に出席。明日海は「(萩尾氏から)細かな意見もいただき、ここに来て、新たな役作りのヒントにも。幸せを実感しました」と言い、新年初日の開幕に備えてきた。

 柚香は「いよいよ、と、初日(の開幕を)前にして高揚感、緊張感が高まって、アドレナリンが出っぱなしでした」と笑い、仙名は「(初日まで)とても気持ちよくやってこれました」と、充実した表情で語った。

 そんなキャストを前に、萩尾氏も「恥ずかしいし、ありがたい」と感謝。お気に入りの場面を問われると、明日海演じるエドガーが、窓から入ってきて、アラン(柚香)を誘う場面などをあげ「鳥肌が立つように、すごくきれいなイメージ。あのシーンを見るために、何回か(観劇に)通わねば…という気分です」と話していた。

 明日海演じる主人公エドガーとともに、時空を旅する親友アランが柚香。エドガーの義父は男爵役の瀬戸かずや、トップ娘役の仙名は義母を演じ、仙名ふんする男爵夫人へ愛を募らせる医師は鳳月杏(ほうづき・あん)が熱演。エドガーの最愛の妹メリーベルには、100期入団で4年目の華優希(はな・ゆうき)が抜てきされた。

 宝塚大劇場公演は2月5日まで、東京宝塚劇場では2月16日~3月25日。