昨年公開の映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」でブルーリボン賞新人賞を受賞した石橋静河(24)が、9月1日公開の映画「きみの鳥はうたえる」(三宅唱監督)に出演する。受賞後初の映画で、柄本佑、染谷将太といった演技派と並んでも、引けを取らない存在感を放っている。このほど日刊スポーツのインタビューに応じた。

 各種新人賞を総なめにした「夜空-」だが、本人は「役者を辞めた方がいい」と思うほど実力不足を感じたという。今作は「ゼロ地点に立ったような、真っさらな状態で臨みました」。函館を舞台に、若い男女3人のささやかな日常とその崩壊を描いた青春映画。3週間函館に泊まり込んでの撮影は、共演者らと“役を生きた”感覚だった。

 「人生の一部として、撮影した時間が大切に残っています。作品を見たら、作っているときの空気感が映像に残っていて、映画として伝わるものになっていました。自分が出ている以前に、いろんな人に見てほしい」。柄本と染谷の間をフワフワと漂う役だけに、現場でもたわいもない話を重ねた。「映画を作っている人たちでもあるので、生きてきたことが芝居につながっている。勉強になりました」。

 放送中のNHK朝ドラ「半分、青い。」に出演するなど、デビュー3年目ながら順調にキャリアを歩んでいる。学生時代にはバレエで留学経験があり、女優になる前はコンテンポラリーダンスに打ち込んでいた。絵を描くことや歌うことも好きで、趣味でボイストレーニングにも通っている。「好きなことは割と多いかも。芝居とか、表現するお仕事につながってしまっていますね」と笑う。

 最近は「1人で旅をすると、自分の勘がさえる感覚がある」という理由で旅も好き。昨年は1人でキューバに行った。「全然危なくない。共産国で貧富の差があまりなくて、乱暴が起きにくいんだと思います。観光客に悪さをするとすごく罰せられるらしいです(笑い)。ただただ街を歩いていたら、知らないおじさんが急に歌ってくれたりしました」。多方面から刺激を吸収して、唯一無二の女優に成長していくつもりだ。【杉山理紗】

 ◆「きみの鳥はうたえる」 函館の書店で働く「僕」(柄本)は、失業中の静雄(染谷)と一緒に暮らしている。夏、書店のバイト仲間である佐知子(石橋)と仲良くなった僕は、静雄と3人でクラブへ出かけたり、自宅で飲んだりと遊ぶようになる。佐知子に好意を抱きながらも今の幸せな関係を崩せない僕、次第に佐知子と仲良くなっていく静雄、本音を見せず2人の間を漂う佐知子。夏の終わり、あるきっかけで3人の幸せな日々が壊れていく。原作は佐藤泰志氏が81年に発表し芥川賞候補になった同名小説。映画は時代設定や舞台が変更されている。