反社会的団体への闇営業から、経営体質の問題にまで発展した、吉本興業の一連の騒動。

雨上がり決死隊の宮迫博之(49)とロンドンブーツ1号2号の田村亮(47)が2時間半の会見で涙ながらに訴えれば、吉本興業ホールディングス、吉本興業両社の岡本昭彦社長(52)が泣いたりすべったりのグダグダ5時間の会見。

宮迫たちは世間の同情を引けたから成功。逆に岡本社長の会見は大失敗。あの会見をプロデュースした人間は、相当悔やんでいるはずだ。

お笑いの総合商社、吉本なのに笑いが全然ない。株主総会でもやるような大きな会場を見た時は、ギャグかと思った。一瞬、テレビのロケで「おかもっちゃんは、やめへんで~」と岡本社長が登場するのかと思った。大みそかの「笑ってはいけない」シリーズの「アウト~!」でおなじみの藤原寛副社長が着物姿の女装で「船場吉兆」のささやきおかみよろしく張り付くのではと思いもした。ところがあのありさまだった。

先日、吉本の株を持つテレビ局の編成幹部に吉本問題について話を聞いた。日ごろ、吉本に対して弱腰な姿勢を指摘されることの多いテレビ各局だが、編成幹部は「金銭授受が発覚して、吉本に抗議に行きました。その時に応対してくれたのが岡本社長だったんですけどね。まさか、あんな会見をやるとは」とあきれ顔だ。早く問題を解決しないと、10月編成にも支障を来すから大変だ。

問題が長引く原因は「うそ」だ。元々、問題が大きくなったのは、宮迫たちが金をもらっていないと言ったのが原因だ。さらに100万円もの大金をもらって気付かないのはおかしい。宮迫は「忘年会の支払いに充てた」と言うが、亮に「お釣りをもらってました」と指摘された。いったい、いくらの支払いで、いくらお釣りをもらったのか。

金塊強奪事件の主犯格との関係も「証言してくれる人がいる」と宮迫は説明したが、契約解消を撤回した吉本との話し合いの場にはついてないようだ。

宮迫だけじゃなく、吉本もうそつきだ。宮迫が6月8日に金銭授受を認めてから、24日に謹慎を発表するまで16日間も世間を欺き通した。そして、その後ろめたさを「宮迫たちがうそをついたから」と怒りに転換した。

つまり登場人物が、うそつきだらけなのだ。他人のことは言えないが(笑い)。

吉本騒動で忙しいことは忙しいが、ひとつだけいいことがある。吉本東京本部は、新宿ゴールデン街に隣接している。夜遅くまで張り込んでも、そのままなじみの店に繰り出せる。久しぶりに顔を合わせた週刊誌記者と情報交換をさかなにグラスを傾けた。

真実は何か、そして誰がうそをついているのか。事件の本質を見誤らずに、取材を続けたい。【小谷野俊哉】