NHK連続テレビ小説「エール」(月~土曜午前8時)が14日から約2カ月半ぶりに再開するにあたり、主人公の古山裕一を演じる窪田正孝(32)が日刊スポーツなどの合同インタビューに応じた。

中断期間中は、福島弁を忘れないために「VTRを何度も見ながらセリフを発して耳になじませていた」とし、再開決定には「スタッフからは再開すると言われていたけど、また『エール』を見てもらう機会を作れたことは純粋にうれしかった。中断中も、各方面から見ているよと言われ、シーズン2も楽しんでもらえるのが楽しみ」と語った。

「エール」は「紺碧の空~早稲田大学応援歌~」や「長崎の鐘」「栄冠は君に輝く」など戦前から戦中、戦後と活躍した作曲家の古関裕而さんをモデルにした物語で、主人公の古山裕一を窪田が演じている。14日からは第14週が再開し、15週以降は戦時色が強くなっていく。「露営の歌」が大ヒットし、陸軍からも作曲を依頼される。

窪田はそのあたりを冷静に語る。

「裕一は西洋音楽の経験が吉となり、軍事歌謡で注目されるようになり、仕事が舞い込んできます。彼自身、くすぶっていた時代があるので、認めてもらい、承認欲求も満たされる。でも、いつの間にか戦争は人の心をむしばんでくる。使命だと思っていたのに、周りに人が誰もいなくなって、正しいと思っていたのに、自分を守ることしかできない。撮影現場の空気も重くなっていくのですが、(妻の)音(二階堂ふみ)との会話で、楽しいことを少しずつ見つけられる台本になっていて、助けられました」。

音楽の持つ力についても強調する。

「音楽って誰しもの中にあるんだけど、結局は聞く人の心なんだなと。失恋ソングなら寄り添ってくれるし、ハッピーな曲もあるし、心を鼓舞する曲もある。戦争の時代に生まれた曲は、どうしても(鼓舞する)曲になり、その人にとってはそういう音楽に聞こえる。でも、戦後に『栄冠は君に輝く』や『長崎の鐘』など、また平和な時代に戻れたのは、古関さんの音楽が軍事歌謡にしても哀愁があったから。国のために命をささげた人だけでなく、出征した兵隊さんを待つ家族を思っている、古関さんのそういう優しさが出てくる音楽だから、戦後も作曲家としてやっていけたのだと思う」。

コロナ禍で撮影は中断となったが、今の社会の状況を戦時下とつながる部分があるという。

「コロナで人びとの心がぎすぎすしていますよね。それは戦時中の空気とつながっているような気がしています。当たり前であったことが当たり前でなくなる、今まであったものが、そこにはなくなる。それでも、2カ月がたち、もとのスタジオに戻れたのはうれしかった。仲間に再会できたのもよかった。このぎすぎすした心に、エールが届き、音楽が届いて幸せな気持ちになっていただければうれしいです」。【竹村章】