TBS系ニュース情報番組「Nスタ」などでナレーションを務める同局のベテランアナウンサー堀井美香さん(49)が、著書「音読教室」(KANZEN、4月7日発売)を執筆した。現役アナウンサーが教える音読、朗読術のノウハウが詰まっており、語彙(ごい)力や読解力向上に役立つ1冊に仕上がった。

アナウンサーの仕事をこなしながら執筆作業にも没頭した堀井さん。読むこと、語ることで人を豊かな気持ちに導きたい-。幼い頃の母との思い出を振り返りながら、この先に見据えるものを朗らかに語った。

   ◇   ◇   ◇

-「音読教室」を執筆するいきさつは

「noteというプラットフォームに朗読解析を書きつづっていました。いつも朗読をすると原稿が真っ赤になるほど理論を書き込むのが好きだったので一度まとめてみようと。配信して3カ月ぐらいたった時、出版社さんに本にしませんかとお声がけいただきました」

-どのような人に向けて書いた本ですか

「最初は夜な夜なマニアックで執拗(しつよう)な解析を続けていたのですが、本にする段階でたくさんの方、特にお子さんたちや、そのご家族に読んでもらいたく、わかりやすく書くことを意識しました。姉も義兄もめいも小学校の先生をしているのですが、学校の先生方にも読んでいただいて感想を伺ったりしたいです。読んでくださった方が音読や朗読がしてみたくなる本になっていれば良いです」

-自身も子育て中に読み聞かせを実践していたそうですが、一番大切なことは

「音や照明、聞く環境、空間を作ることはなんとなくやっていたと思います。読み聞かせは、聞く人の想像を奪わないようにフラットにと教えてくださる方もいらっしゃるのですが、私は表情過多で本気のお芝居で読みました。そのたびに子供たちは大笑いしたり泣いたり。人の感情を絵本から読み取っていたと思います」

-自分が子どものころもご両親から読み聞かせしてもらっていましたか

「母が保育士だったので忙しかったけれどたくさん読んでもらいました。小学校の頃には毎朝音読をしてからでないと学校に行かせてもらえなかった。泣きながら読んで学校に行った日もありましたが、母に感謝です」

-その体験は人生にどういかされましたか

「まずはこの仕事を生業(なりわい)にできたということ。それから、今、読んでも年のせいもあり記憶にはなかなか止まらないですが、小さい頃に読み込んだ言葉は今でも暗記していて。美しい言葉が時々頭の中で踊ったりします」

-著書では「ごんぎつね」「蜘蛛の糸」「雨ニモマケズ」が登場します。教材にした理由は

「誰しもが学んだことのある教科書に乗っている題材から選びました。一番メジャーで、読みやすい。『雨ニモマケズ』はTBSラジオでお子さんにレッスンして一緒に朗読をするということをしたのですが、お子さんたちの読みが素晴らしかったので、あらためて向き合いたいと思いました」

-アナウンサーのお仕事もしながら本も執筆。今、どんなことに意識、目標を置きながらお仕事されていますか

「ナレーションの仕事はバラエティーから報道までジャンルを問わず本当にたくさんさせてもらっています。1日に3~4つのスタジオをハシゴしたり。10年前の自分のナレーションと今のナレーションが違うように、自分の読みは年を経てどんどん変化していくと思います。光が当たっても当たらなくても読み続けていきたいと思います」

◆堀井美香(ほりい・みか)1972年(昭47)3月22日、秋田県生まれ。法大法学部を卒業後、95年4月にTBSに入社。入社2年目で結婚。1男1女の母。ニュース情報番組「Nスタ」や「ドキュメンタリー『解放区』」バラエティー番組「バナナサンド」などでナレーションを担当。同局ラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」にレギュラー出演。趣味はピアノ、コーヒー、絵画。