吉永小百合(76)が14日、都内で行われた主演映画「いのちの停車場」(成島出監督、5月21日公開)完成披露試写会で、同作の総指揮を執りながら昨年11月に急性大動脈解離で急逝した東映会長の岡田裕介さん(本名岡田剛、享年71)の死について公の場で初めて言及した。「とても大きな悲しい出来事」と口にすると、目に涙を浮かべ、声を詰まらせたが、岡田さんの“遺作”を届ける覚悟を示した。

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マイクを握った吉永の目に、涙が浮かんでいた。

「撮影が終わった後、私たちにとって、とても大きな悲しい出来事がありました。総指揮の岡田会長が亡くなられたことです」

何度も、頭上を見上げ、こぼれ落ちそうになった涙をこらえて、続けた。

「公開まで、たくさんの方に見ていただけるようにアピールしてまいりたい」

震える声の裏に、苦難の道のりがあった。コロナ禍の中、昨年9月4日に全員がPCR検査を受けてクランクインも、同8日に伊勢谷友介(44)が大麻取締法違反容疑で逮捕。吉永は岡田さんと会談し「本人に罪はあるが作品に罪はない」と思いを1つにし、同11日に東映東京撮影所で会見を開き、編集せず公開すると発表。さらに10月には共演の広瀬すず(22)も新型コロナウイルスに感染した。

吉永が、80年の「動乱」で俳優、プロデューサーだった岡田さんと出会って40年。122本目の映画で新しいヒロイン像を作りたいと、演じたことのない医師役を提案したのも岡田さんだ。吉永は救命救急医や在宅医療の専門医に学び、成島監督を「年齢に関係なく、まだ成長しようとする。映画に対するものすごい努力…もういいじゃないかと思うくらい」とうならせるほどの役作りで応えた。

会場には、岡田さんの下で社長を務め、形見のジャケットを着た東映・多田憲之相談役の姿があった。「大変な思いの中、みんなで力を合わせて今日を迎えられた」と語る吉永の言葉と涙は、きっと岡田さんに届いている。【村上幸将】