米3大ネットワークのひとつNBSテレビが10日、アカデミー賞の前哨戦として知られるハリウッド外国人記者協会(HFPA)が主催するゴールデン・グローブ賞の来年度の放送を取りやめることを発表した。

78年の歴史を持つゴールデン・グローブ賞を巡っては、今年の授賞式が行われる直前の2月にHFPAの会員に長年にわたって黒人の記者が1人もいない多様性の欠如が発覚し、人種構成が偏っていると批判が出ていた。

HFPAは問題の改善に努めることを授賞式で表明したものの具体的な改革案は示さず、その後も黒人がメインキャストを務める主要作品の記者会見への出席を拒んできたことも暴露され、人種差別的な体制に業界内からボイコット運動が起きていた。

NBCは「意義のある改善を成し遂げるには多くの時間と労力を要する」と声明で理由を説明。「2023年には再び放送できるようになることを望んでいる」とコメントし、HFPAに対して抜本的な改革に取り組み、結果を出すよう促している。この発表を受け、来年度の授賞式の放映権について他のテレビ局とHFPAが新たに交渉を行っているかどうかは分かっていない。

HFPAを巡っては人種差別問題のみならず、会員たちが高級ホテルでの宿泊や飲食、贈り物など高額接待を受けていたことも明らかになり、会員数わずか87人の一非営利団体への特別扱いも問題視されていた。そんな中、今年のゴールデン・グローブ賞の選考から漏れたネットフリックスの大ヒットドラマ「ブリジャートン家」を手掛けた敏腕クリエーターのションダ・ライムズさんが、「サプライズヒットするまでHFPAは記者会見の出席を拒否してきた」と告白したことが引き金となり、ネットフリックスやワーナー・ブラザース、アマゾンなど大手スタジオが相次いでボイコットを表明。ついには女優スカーレット・ヨハンソンや俳優マーク・ラファロらセレブまでもがボイコットを呼びかける事態となり、放映権を持つNBCテレビから見放されたことでゴールデン・グローブ賞はこのまま消滅する可能性も浮上している。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)