志尊淳(26)が9日、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で行われたドキュメンタリー映画「人と仕事」(森ガキ侑大監督)公開記念舞台あいさつで、観客に「最近、地震とかいろいろありますけど、皆さん、どうか、どうか生きて下さい」と、7日夜に関東を直撃した地震も踏まえつつ、呼び掛けた。

「人と仕事」は当初、志尊と有村架純(28)主演の劇映画「保育士T」として企画が進められていたが、20年4月7日に1回目の緊急事態宣言が発出され、保育園から撮影許可を得られないなどして頓挫。河村光庸エグゼクティブプロデューが、2人がエッセンシャルワーカーと呼ばれる保育士、農家などを訪問し、仕事や生活の変容を取材するドキュメンタリーにするよう提案し、1年かけて撮影、製作された。

志尊は「まず、劇映画がなくなってしまったということにショックはありましたし。でも、僕らだけでなく大事な行事がなくなった方もいる。作品を届けられる機会を頂いたことはありがたい」と劇映画からドキュメンタリーへと大転換したオファーを受けた経緯を語った。その上で「人と人のコミュニケーションを描く映画。筋書き、先がない。自分が人に伝えられるかと思ったんですけど(心の)ベクトルが1つになった。救いたいというより、僕もガキさん(森ガキ監督)も何をして良いかが分からない。やれることをやってみよう……有村さんと、みんなでやっていこうと」と振り返った。

映画の冒頭で、20年9月深夜2時に東京・渋谷の街を、志尊がカメラを手にした森ガキ監督とともに歩き、行き交う人に声をかけ、コロナ禍で変化した生活、日常を尋ねるも断られ続ける場面から始まる。オファーや予定なしに、ゲリラ的に渋谷を歩き、取材する手法を提案したのは志尊で「(取材すると決めた)スケジュールだからお話しして、となると構えるのは僕も同じ」と振り返った。

森ガキ監督は「みんな、無視する。『ここに志尊淳、いるよ』と思ったけれど、カメラを向けていると心を開いてくれない」が当時を振り返った。志尊は「すごく難しかった。いろいろな事情で映せない、カットした方もいた。たまたまですけど看護師さんが多く、カメラが回っていないところでも考えさせられるようなお話を頂いた」と振り返った。

映画には、志尊と有村が個室で2人だけで対談し、思いをぶつけ合うシーンも描かれる。志尊は、森ガキ監督が「記録なので(映画には)使わないから。(志尊と有村が)一緒のシーンは少ないけれど、1回、共有しようという回」と説明しながら、映画に使ったと明かした。その上で「使わないということだけで、僕らは荷が下りるんですよ。やっぱり、どうしても(俳優として)見られてしまう自分と、見られていない自分で(見られている時は)1枚、フィルターがかかる中で、使わない(と森ガキ監督が言った)からこそ、しゃべれた内容。かと言って、それを使って欲しくないわけじゃなくて」と振り返った。森ガキ監督は、志尊を「戦友」と評した上で「(2人の対談は)不思議な空間。計算して、こういうのが撮りたいというわけでもなかった。とりあえず2人きりになって、この作品に対して、世の中に対してでもいいですし、何か思っていることを(語ってもらった)2人きりになった時に、いい化学反応が起こったのかな、と」と納得の表情を浮かべた。