第73回NHK紅白歌合戦の司会者が先日、発表された。「もうそんな季節か」と思ってしまう。今後は出場歌手が注目される。今年は「花の82年組」と言われる女性アイドルが40周年の節目を迎える。

中でも中森明菜(57)の8年ぶりの紅白復活を期待する声が上がっている。かつてインタビューした言葉から、明菜の紅白への思いを振り返ってみた。

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今年の紅白の司会は、俳優大泉洋(49)女優橋本環奈(23)桑子真帆アナウンサー(35)が務め、スペシャルナビゲーターを嵐の櫻井翔(40)が担当する。今年のテーマは「LOVE&PEACE-みんなでシェア!-」。世界情勢などを意識して、愛と平和のメッセージを送る内容になりそうだ。

今後、注目されるのが出場歌手である。今年は82年(昭57)にデビューした「花の82年組」と言われる女性アイドルが40周年の節目を迎える。デビュー順に、松本伊代(57)小泉今日子(56)堀ちえみ(55)三田寛子(56)早見優(56)石川秀美(56)中森明菜らで、女性アイドルの豊作年と言われた。ちなみに、この年の第24回日本レコード大賞の最優秀新人賞は男性アイドルのシブがき隊(「100%…SOかもね!」)だった。

みんな出場してくれれば大盛り上がりなのだが、そうはいかない。そんな中で、紅白復帰を期待する声が強いのが明菜である。毎年のことではあるのだが、40周年を機にあらためて動向に注目が集まっている。紅白復帰となれば14年の第65回に米ニューヨークから特別出演(歌唱曲「Rojo-Tierra-」=スペイン語で赤-大地-の意味)して以来、8年ぶり9回目となる。

音楽賞レースが激烈を極めた時代に「ミ・アモーレ」(85年)「DESIRE」(86年)で、2年連続日本レコード大賞を受賞。これ以外にも「禁区」「飾りじゃないのよ涙は」「TANGO NOIR」「難破船」など大ヒットを連発した、日本を代表する歌姫である。ただ、恋のもつれから絶頂期の89年7月に自殺を図って以降は低迷し、紅白からも遠ざかった。

久々に紅白に復帰したのが、02年の第53回紅白(歌唱曲「飾りじゃないのよ涙は」)だった。実に14年ぶり(7回目)の出場だった。この年はデビュー20周年の節目だった。ちょうど20年前になる。出場決定直後に、都内の所属レコード会社で単独でインタビューした。紅白への思いを素直に話してくれた。

明菜 何のために、このお仕事をしているかっていったら、ファンの子が喜んでくれるのが本当に第1なので。「やった、明菜。ありがとう。紅白楽しみになった、うれしい」って、喜んでくれる言葉が、私だけでなくスタッフも、うれしいんです。

14年ぶりに出場することへの思いも語った。

明菜 (以前に)出させていただいた時もそうでしたけど、紅白が全部終わって、着替えに楽屋に帰ると、もう除夜の鐘が鳴っているんです。皆さんと「あ~、除夜の鐘ですね。終わりましたね。お疲れさま、お疲れさま」って言っている時に、やっと紅白に出られたことを実感できるんです。それまでは無我夢中ですから。すべてが終わった後「あっ、今年、出られたんだ」と喜んでいるだろうなと思います。

14年の間に、音楽シーンは大きく変わった。ミュージシャンの顔触れも、がらりと変わった。ただ明菜はまったく意に介していなかった。

明菜 歌手とかタレントじゃなくても、毎日、人間って学ぶ動物じゃないですか。学ぶのは決して年上からだけじゃない。若い子からもいろんなことを学びます。時代が変われば、自分が味わったことのない現実を、若い子は歩んでいるわけですから。そういう子が新鮮に出す言葉、態度は、すごく勉強になる。いろんな人の話を聞いて、バランスを取るのが人間に課せられたものだと思うから、若い子だろうが、赤ちゃんだろうが先生です。

このインタビューから、20年の歳月が流れた。明菜は素直に丁寧に質問に答えてくれた。その姿勢や、ファンへの思い、紅白への思い、そして学びの思いは、きっと今も変わっていない、と信じている。【笹森文彦】

◆中森明菜(なかもり・あきな)本名同じ。1965年(昭40)7月13日、東京生まれ。81年の日本テレビ系「スター誕生!」をきっかけに、82年に「スローモーション」で歌手デビュー。85年に「愛・旅立ち」で映画初主演。92年にフジテレビ系「素顔のままで」で連続ドラマ初主演。160センチ。血液型A。