是枝裕和監督(60)が9日、都内で行われた、総合演出を務めたNetflixのドラマ「舞妓さんちのまかないさん」(12日から全世界独占配信)配信記念プレミアイベントに登壇した。

この日は、観客から登壇者への質問コーナーがあり、客席から是枝監督に「20歳の自分へのメッセージは?」と質問が出た。同監督は「遠い話だよね」と笑みを浮かべた。その上で「このドラマは(登場人物)それぞれが、それぞれの居場所を見つける物語。20歳だと、なかなか見つからない…自分も、そうだったから『焦るな。居場所は見つかる』と言ってやりたい」と語った。

18年に映画「万引き家族」で世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭の最高賞パルムドールを受賞し、22年には初の韓国映画「ベイビー・ブローカー」を手掛け、主演のソン・ガンホが韓国俳優として初の同映画祭男優賞を受賞と、世界の映画界をリードする、是枝監督。短いながら、実感と思いがこもった一言に、客席からは納得とも言うべき、うなずきと静けさが入り交じった空気が流れた。

「舞妓さんちのまかないさん」は「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中の漫画家・小山愛子氏の、累計発行部数270万部突破の同名漫画を実写化。撮影は、21年から22年初めまで京都で行われた。是枝監督は、実写化に向けた取材をコロナ禍の中で行ったと説明。「人との繋がり、関わりを分断される中で、取材を始めました。非常に狭い世界の中で、濃密に人と人がつながり合う、支え合う共同体を取材させていただく中で、人が生きていく上で、この漫画が何を描いているのか、その方々が何を守っているかを意識して、演出した」と取材を振り返り、演出意図を説明した。

その上で「私たちが次の価値観を、どう持って人と関わったら良いかのヒントが、ちりばめられているんじゃないかと思っております。見ていただけましたら、本望です」と、作品の本質を訴えた。