イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)のドラマー高橋幸宏(たかはし・ゆきひろ)さんが、11日午前5時59分、脳腫瘍により併発した誤嚥(ごえん)性肺炎のため亡くなった。70歳。所属事務所が15日、発表した。20年夏に脳腫瘍の摘出手術を受け、闘病中だった。ソロ活動のほか、多くのアーティストとコラボ、ファッションデザイナーとして自身のブランドも持つなど多彩に活躍した。喪主は妻の高橋喜代美さん。後日、お別れの会を執り行う予定。

   ◇   ◇   ◇

「教授」と呼ばれる坂本龍一や、祖父がタイタニック号の乗客だった細野晴臣と、キャラの立ったYMOの中で、一番おしゃれで器用、隙がなかったのが高橋幸宏さんだった。

ファッション・ブランドを立ち上げ、ラジオのパーソナリティーをこなす一方で、名曲「ライディーン」を作曲し、「中国女」でボーカルの才も発揮した。少ない打数で多彩に表現する技法は多くのドラマーからリスペクトされた。

84年に撮影された主演映画「四月の魚」の時に、めずらしく人間くさいところを垣間見た気がする。前年公開の「戦場のメリークリスマス」で坂本が注目されたこともあり、製作発表には多くの取材陣が集まったが、なんと主演俳優が欠席した。体調不良と説明があったが、週刊誌で「不倫」が報じられたばかりで、その追及を恐れたようだ。

後年、親交のあった竹中直人の深夜番組でシュールなコントを何度も披露していたので、笑いでけむに巻く術もあったと思うのだが、言い訳めいたことは美意識が許さなかったのだろう。多方面への繊細な表現力はそんなナイーブさから生まれたのだと改めて思う。【相原斎】