黒木華(33)が5日、都内のテアトル新宿で行われた映画「せかいのおきく」(阪本順治監督、4月28日公開)完成披露試写会で、オファーを受けた当初、うんこをテーマの1つとして描く映画だとは知らなかったと明かした。

「せかいのおきく」は、今作が30作目となる阪本順治監督(65)のオリジナル脚本かつモノクロ映画に初挑戦した作品で、黒木は22歳の武家の娘おきくを演じた。おきくは激しい雨が降る中、かわや(トイレ)の前で、くみ取った下肥を買い、売って生計を立てる、池松壮亮(32)演じる下肥買いの矢亮と、寛一郎(26)が演じた紙くず拾いから転職した中次と雨宿りする。おきくと中次の間には、ほのかな恋心が芽生えるが、その矢先に、おきくは、ある出来事で声を失ってしまう。そんな3人が過酷な青春をともにに駆け抜ける物語。

映画の1つの大きなテーマとして、矢亮と中次が、かわやの下肥をくみ取り、売って生計を立てる、下肥買い…つまり、うんこを軸にした循環型の社会という軸がある。企画・プロデューサーも兼ねる、原田満生美術監督は「自分が大病を患った時期があり、世の中がコロナになって価値観も、ほぼ崩壊して…これから、どうやって生きて、映画と向き合おうか考えた時、環境問題をやっている学者さんと出会い、こういうテーマをちりばめ、広めていくプロジェクトを作り、その第1弾として阪本さんにお願いした」と経緯を語った。

それを受けて、阪本監督は「循環型社会というテーマを背負いつつ、僕自身が啓発的な作品が苦手。自分自身が、環境問題とかに意識を持って毎日、生きているわけではないんで。やるんであれば…うんこ。うんこなら、しますと」とオファーを受けたいきさつを語った。その上で「最初に、書いたあらすじのタイトルが『江戸のうんこ』だったんですけど、華ちゃんを迎えることになって、すぐ取りやめました」と、黒木を主演に起用する段階で、うんこをタイトルから外したと明かした。さらに「うんこだけがテーマではないですから。3年前に華ちゃんと寛一郎君を迎え、淡い恋愛も含めた娯楽作品にしようと。僕自身、コロナ禍で鬱々(うつうつ)としていたので、やけくそで、くそ真面目に撮りました」と振り返った。

黒木は「最初にお話をいただいたのは、原田さんで、すごく短いものが出来上がって何年かしたら、超変異したらこうなると改めていただいた」と、オファーの経緯を語った。その上で「私は、うんちの話だと知らなくて…ロマンチックな青春ものだと思った。どういう作品になるだろうと楽しみだった」と笑った。

おきくの役作りに際し、阪本監督からは「おきゃん」と言われたが、意味が分からなかったという。黒木は「監督が。『おきゃん、おきゃん』と言う。聞いたことがないので、どういうことなんですか? と聞いていた。私は知りませんでした」と言い、笑った。阪本監督は「(おきゃんは)言わないですか?」と言いつつ「ずけずけ自分の父、大人にものを言う、活発な人という意味です」と説明した。