投資家の千葉功太郎氏(49)が「空飛ぶクルマ」の国内第1号オーナーとなった。4月に、自身が代表を務める「DRONE FUND」が投資していた「株式会社SkyDrive」から、商用機「SD-05」を購入したことが発表された。千葉氏がこのほど、日刊スポーツの取材に応じ、購入経緯や将来の夢について語った。【取材・構成=高橋洋平】

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ついに夢が実現した。千葉氏は目を輝かせた。

「投資した最初の日から1号機を自分が買いたいと言い続けてきたんです。その夢がかなって、感無量です」

幼少期の頃からの夢を具現させるための第1歩だった。購入意図を明かした。

「ドラえもんのタケコプターが欲しいなと思って育ってきたんです。ボーッと生きていると、タケコプターはいつまでたっても実現しなさそうだなと思い始めて、ある意味タケコプターに近いものを作らなくちゃ、というのが『空飛ぶクルマ』のプロジェクトでした。ドラえもんの世界を生きているうちに現実に早くしようという思いですね」

22年度後期NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の終盤には「空飛ぶクルマ」の「かささぎ」が登場する。実際に投資家も出演した。

「朝ドラの中で、主人公が『空飛ぶクルマ』を操縦するのが後半のドラマです。『SkyDrive』の福澤知浩CEOが原作協力をしています。試験飛行に投資家がやってきて、投資をしてくれるというシーンがあって、それが僕です。感動しました。普及の一環というか、NHKの朝ドラという大きいドラマの中に登場するということは感動の一言でした」

「空飛ぶクルマ」は25年の大阪万博での商用運航を目指している。今後、実現するにはクリアすべき障壁がいくつもある。まずは国土交通省から航空機としての認証となる「型式証明」の取得や、安全な離着陸をするための運用を確立する必要がある。

「2030年だと僕みたいに飛んで、そこに取材が殺到しているようなイメージかなと思っています。2040年くらいは普通に普及してきて、2050年くらいだと誰でも使っている、というステップだと思います」

普及の広がり方は個人購入ではなく、公共財をイメージしていた。

「シャトルバスみたいな公共財自治体だったりとか、事業者会社が購入をして、それを皆さんがタクシーのように使う。料金を都度払うような運用になると思います」

今後は人間不在でも、問題なく自動操縦が進むという。

「今はパイロットが必要ですけど、2030年以降、パイロットがいらない、完全自動運転になるんですね。パイロットがいらなくなるので、24時間365日、機体は自動運航で飛んでいて、お客さまを乗せて降ろしてというのを、空の上でやり続けているようなイメージですね」

普及するにあたって、高層建造物が多くある東京はうってつけだという。

「東京のメリットとしては、たくさんビルが建っていて、ビルの屋上に必ずヘリポートのマークがある。あれ自体は今使われていないんですね。ただ『空飛ぶクルマ』の業界から見ると、あそこってまさに『空飛ぶクルマ』の離着陸ポートだよね、というふうに見えています」

航空法の盲点を突く。航空法が規定している領域は上空150メートル以上となっている。

「地表に近い低空高度のところがガラ空きだな、というところに気が付きました。『DRONE FUND』を立ち上げたきっかけにもなっているんです。高度150メートル以下というのは、航空機が入ることができないんですね。東京の空でもガラ空きなんですよ、低いところは。高いところは飛行機が入るんですけど、その間は全部空いてるんですね。そこが大きな市場であり、大きなビジネスチャンスだなと思っていて。地表から150メートルくらいの空域というのが非常に人類にとっては面白い産業領域になるなと」

未来が待ち遠しい。空を自由に使えることで可能性が一気に広がる。

「空を誰でも自由に使える未来っていうのは、移動もそうですし、物を運ぶもそうですし、あるいは情報を取得するみたいなこともあるかもしれない。いろんな意味で、空を利用する、使うことが本当に個人で誰でも自由にできる時代っていうのが来るんじゃないかな、というのがまず大前提で、僕の気持ちとしてあります」。

さらに夢が広がる。

「決まった路線を、決まった時間で移動すること以外で空を使うことができなかったと思うんですけど、皆さんがタクシーに乗るような感覚、あるいは自家用車でどこか家族と家族で休日キャンピングカーで行くように、空を使えるようになる時代が来るという話です」

◆千葉功太郎(ちば・こうたろう)1974年(昭49)5月11日、東京都生まれ。麻布中、麻布高を経て慶大環境情報学部を卒業。97年にリクルートへ入社。00年にサイバードへ転職し、08年にオンラインゲーム開発のコロプラ社に参画。同社副社長として東証1部上場に導き、16年に退社。17年にはドローン産業への投資に特化した「DRONE FUND」を立ち上げた。18年にワタナベエンターテインメントとマネジメント契約。同年に最大7人乗りの小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」を国内初購入。20年にパイロットライセンス取得。