高良健吾(35)が、22年前の殺人事件の秘密を背負い、闇の仕事も請け負う建設会社社長を演じた主演映画「罪と悪」(齊藤勇起監督)の公開が、24年2月に決定した。高良は「明るく、見やすい作品ではなく、問題作だと思いますが。この世の中に堂々と向き合ってお届けできればと思います」と、自ら問題作であると認めつつ、真正面から伝えていくと宣言した。高良演じる主人公と少年時代にグループを組み、同様に殺人事件に絡んだ過去を背負う刑事を大東駿介(37)2人とともに過去の殺人事件に深く関わった友人を石田卓也(36)が演じる。
「罪と悪」は、井筒和幸監督作品を中心に岩井俊二監督、武正晴監督、廣木隆一監督作品等で助監督を務めた、齊藤勇起監督が完全オリジナルの脚本も手がけた初監督作品。13歳の少年が殺され、同級生の少年グループのうち1人が犯人を殺し、殺害現場となった家に火を放ってから22年…沈黙を経て罪を背負った幼馴染3人が再会するが、あの時と同じ場所で再び少年が殺されるという、サスペンス映画だ。齊藤監督は「遠い記憶の中でずっと引っかかっていた出来事から着想したオリジナルストーリーです。後悔の念と共に封じ込めてた記憶と向き合うことで少しずつ前進しては後退しての繰り返しでなかなかゴールまでたどり着けませんでした。最後に出した答えも正しかったのかは分かりませんが高良さん、大東さん、石田さんの3人が導き出してくれた結末は自分も考えていなかった時を超えてのアンサーでした」と3俳優に感謝した。
高良は劇中で、荒んだ家庭環境に育ち、現在は地元の不良たちを集めた闇の仕事も請け負う建設会社を経営する春を演じる。13歳の正樹が殺され、橋の下に無残に捨てられて発見されたのを受け、犯人は正樹が遊びに行っていた怪しい老人に違いないと家に押しかけ、もみ合いの末、1人が殺してしまい家に火を放った…そんな過去を背負った役どころだ。
齊藤監督とは以前から親交があり「齊藤さんが助監督の頃から知っていて、オファーを頂いた当時はご近所さんでした。たまたま道で会うことが多く、そこで『罪と悪』のまだ形になる前の話をして頂き、『その時が来たら、高良にお願いしたい』と言って頂きました。それが数年前の話です」と同監督との縁と製作の経緯を明かした。そして「あの時、道端でコーヒーを飲みながら話していた企画がやっと形になるという事でとてもうれしかったです。齊藤さんの初監督作品。なにがなんでも齊藤監督の力になりたいと思いました」と力を込めた。
大東は、一連の殺人事件から時が過ぎ、刑事になり、父の死をきっかけに帰ってきた晃を演じた。大東も、出演した21年の映画「草の響き」(斎藤久志監督)で助監督を務めていた、齊藤監督とは縁があった。「齊藤勇起初監督作にはぜひ参加させてほしい。映画『草の響き』撮影時、函館のスナック青りんごのカウンターで、当時助監督を務めていた齊藤氏と約束をしたあの夜の出来事が現実になりました」と、初監督作でのタッグ実現への感慨を口にした。そして「この作品を齊藤監督の故郷、福井県の最高のロケーションでこの20年、俳優として同じ時代を歩んできた高良健吾さん、石田卓也さんと共にかたちに出来たことを心からうれしく思います」と、高良と石田との共演を喜んだ。
石田は、家業の農業を継ぎ、ひきこもりになってしまった双子の弟直哉の面倒も見ている朔を演じる。「脚本を読ませて頂いて最初に、朔という役に良くも悪くも人間臭さを感じました。『これだ、待ってたよ!』と思う役に出会える事はめったにありませんが、まさにそれでした」と役どころとの巡り合いに運命を感じたと明かした。そして「撮影現場で共演者の方とお芝居をすると、やはり脚本を読んでいるだけではわからない心の動きや、空気感がたくさん出てきて一瞬一瞬の緊張感がありました。どんなシーンになるのか演じている僕達がとても楽しみです」と作品に期待した。
高良は、齊藤監督の地元・福井での撮影を振り返り「現場はとにかく刺激的で、齊藤さんの想いを、現場のみんながどうにか表現しようと必死でした。齊藤さんの地元である福井の方々の協力も手厚く、感謝しかありません。みんなで悩み苦しみ、表現し、ここまで現場に強く結びついた経験は今までなかったと思うくらい、濃い時間でした」と熱く語った。そして「福井での撮影で、地元の方々と仲良くなり、今でも思い出すくらい特別なものになりました。2022の夏に、現場のスタッフ、キャスト、福井の方々の協力によって出来上がった」と唯一無二の作品であると強調した。
大東も「歪な過去を背負った3人の幼馴染の物語。撮影オールアップ時、深夜、僕たちの頭上に3羽の真っ白な鳥が旋回していました。夢のような時間でした」と、福井での撮影が特別なものだったと力を込めた。石田は「現場は映画内容とは真逆でとても穏やかで、監督がとてもフレキシブルにその場で出たアイデアを柔軟に取り入れているのが印象的でした」と振り返った。そして「映画を観る前それから観た後で、タイトルにもなっている『罪と悪』について皆さんがどんな思いを抱いていただけるのか? 自問自答してどんな答えを出していただけるのか? 皆さんと共有できたらうれしいです」と語った。
齊藤監督は「この作品への俳優部、スタッフの志の純度の高さが後押ししてくれて出来上がった結果です。映画はお客さんの皆さんに観ていただくことで本当の終わりを迎えます。多くの方と共に結末を見届ければこれほど喜ばしいことはありません。いつの日かこの映画について一緒に語り合える日を待っています」と公開されるその日を心待ちにした。
◆「罪と悪」13歳の少年、正樹が殺された。死体は町の中心にある橋の下に無残に捨てられており小さな町はたちまち不安と恐怖に包まれた。人々は警戒しあい、あらぬうわさで持ちきりになる。正樹の同級生、春・晃・朔・直哉は、犯人は正樹がよく遊びに行っていた怪しい老人「おんさん」に違いないと家に押しかけもみ合いの末、1人がおんさんを殺してしまう。そして彼はおんさんの家に火を放ち、事件は幕を閉じたー。
時が過ぎ、晃(大東駿介)は刑事になり、父の死をきっかけに町に帰ってきた。葬式に来た朔(石田卓也)に礼をし、久々に話す2人。朔はひきこもりの弟直哉の面倒を見ながら、親の農家を継いでいた。ほどなく一人の少年が橋の下で死体で見つかる。正樹と全く同じように…。晃は少年の殺害事件の捜査で、春(高良健吾)と再会する。春は建設会社を営みながら、不良少年たちの面倒を見ていることで慕われており、殺された少年も春のもとに出入りしていたのだ。
三人の再会で、それぞれが心の奥にしまっていた22年前の事件の扉が再び開き始める。20年前の事件の真相は、そして罪と向き合うということとは…本当の悪人は誰か。