寺尾聰(76)が、スタジオポノックの新作長編アニメーション映画「屋根裏のラジャー」(百瀬義行監督、12月15日公開)で、1968年(昭43)の俳優デビュー以来55年で、初めて声優を務めたことが22日、分かった。

アニメのキャラクターに声を当てることが「難しくて怖がって一切やってこなかった」が、作品性にほれ込み、吹き替えも含めて初めて声の仕事に挑戦。物語の重要な鍵を握る老犬を演じる。また同社の17年の長編第1作「メアリと魔女の花」に主演した杉咲花(26)が、謎に包まれた存在のオーロラを演じる。

石原裕次郎さんと三船敏郎さんの2大スターが共同で製作・主演した映画「黒部の太陽」で、父の宇野重吉さんと父子共演し、デビューしてから55年。寺尾が、未開の地だった声優業に、ついに踏み込んだ。「アニメーションに声を当てるということが、俳優人生で初めての経験でした。自分の声を出したときにそのキャラクターに一体化しているかどうか、アニメーションの中のキャラクターに命を与えられるかどうかとても責任重大で、難しくて怖がってこれまでアフレコのお仕事を一切やってこなかったのですが」と、声優業をやってこなかった理由を説明した。

「屋根裏のラジャー」は、人間によって想像された友達ながら、忘れられると消えていく運命を持つ存在・イマジナリを描く。寺尾が演じる老犬もイマジナリで、物語の重要な局面をけん引する役どころだ。寺尾は、西村義明プロデューサー(46)からオファーを受け「いただいた映画の資料を拝見したとき、すごくすてきな話で引き込まれるものがあり、やってみたいと素直に思いお引き受けしました」と、物語の素晴らしさに出演を決意した。

アフレコを振り返り「初めての仕事でしたが、百瀬監督や西村プロデューサーなどベテランの方たちから教わることがたくさんあると思い、安心して寄りかからせていただきながら、とても良い温度感をもらってアフレコさせていただきました」と手応えを口にした。

西村プロデューサーも「ラフな格好でスタジオに入り『うまくできるかな、俺。ま、やってみるよ』と、ほほ笑みながらアフレコブースに入っていった寺尾聰さんでしたが、その第一声が発せられた瞬間、スタジオ内が静まり返りました。そこにいた全スタッフが息をのむ、素晴らしい声の芝居。寺尾さんの声は、この映画に隠されたもう一つの物語を浮き彫りにしていきます」と絶賛。寺尾は「後は映画をご覧になって頂く皆さまが、楽しんで喜んで帰ってくれるかなと、ワクワクして期待しています」と公開を心待ちにした。

また「メアリと魔女の花」でヒロインのメアリを演じた杉咲が、スタジオポノック長編2作目となる「屋根裏のラジャー」にも出演する。劇中で演じるオーロラは、その姿、形も謎に包まれているが、物語を左右する重要な役どころだ。「大胆さと線の細さのどちらも心に、まだ行ったことのない魅力的な惑星のなかへ、えいやっと踏み出していくような時間でした」とアフレコを振り返った。

西村プロデューサーも、スタジオジブリ時代にプロデュースした14年「思い出のマーニー」で第三のヒロイン・彩香役で起用し、今作で3度目のタッグとなった杉咲に、全幅の信頼を寄せる。「日本映画界で唯一無二の存在感を有した俳優である杉咲さんに、この映画で最も特殊なオーロラ役をお預けしたかった。彼女の声が発せられた時、映画は予想外の展開に引き込まれていきます」と、スタジオポノック作品には欠かせない存在であると強調。杉咲も「参加することができてうれしかったですし、一人の観客としてもとても楽しみです」と公開に期待を寄せた。