劇団新派で最古参の俳優、柳田豊(やなぎだ・ゆたか、本名同じ)さんが22日午前9時26分、肺炎のため死去した。93歳。同日、松竹が発表した。

劇団薔薇座を経て、1953年に劇団新派に入団し、初代水谷八重子に師事。70年の芸歴で「華岡青洲の妻」の良庵、「鶴八鶴次郎」の竹野、「日本橋」の甘酒屋、「婦系図」の酒井俊蔵、「歌行燈」の宗三、「遊女夕霧」の円玉、「残菊物語」の五代目菊五郎など幅広い役柄をこなし、深い趣と人情味のある確かな演技で劇団を支え続けた。「滝の白糸」の裁判長は説得力のある好演をみせた当たり役となった。

最後の舞台は、今年6月18、19日に東京・三越劇場で行われた「新派朗読劇場」の「朗読 残菊物語」五代目菊五郎。

新派は明治時代に大阪で旗揚げされた演劇会がおおもととされ、歌舞伎の「旧派」に対して新たな現代劇として「新派」の呼称がついた。複数に分かれていた劇団が戦後に統合され劇団新派となり、現在は水谷八重子、波乃久里子、喜多村緑郎らが活躍している。