鈴木亮平(40)が主演映画「エゴイスト」(松永大司監督)「劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~」(松木彩監督)で、主演男優賞に輝いた。

     ◇     ◇     ◇

鈴木は「このメンバーがそろったからこそ実現した2つの映画でした」とさわやかな笑顔を見せた。「エゴイスト」ではゲイの青年、「TOKYO MER-」ではヒーローのような熱い医師。対極的な顔を見せた。「実際の方たちに失礼にならないよう、自分の話と思って頂けるように。やれるだけの努力はやったと胸を張って、初めてカメラの前に立ちたい」と向き合った。

「エゴイスト」はゲイの物語と同時に、普遍的な愛を描いた。原作を敬い「現場では龍太と浩輔でいた」と役に没入。「監督、氷魚君と大切なケミストリーで奇跡的な瞬間が生まれた」と振り返る。鈴木、宮沢が個別に表彰された映画賞はあったが、初の同時受賞。「一緒に受賞できて本当にうれしい」と喜んだ。最も大切にしたのは「演じないこと」。上京した人物の孤独感の演技も評価された。

米南部の留学経験も、性の表現に影響した。「20年前の南部オクラホマ州は、皆が優しいけれど、性的マイノリティーに関する差別がすごかった。“欧米は進んでいる”と思いがちですけど、保守的な場所もある。日本も日本にあった形で、当事者が自分たちの物語だと思える作品が増えたら、と。その意味で、今回はゲイムービーを成り立たせる事が僕たちの1つの使命でした」と語った。

21年にTBS系で高視聴率を記録したドラマ版から続く「TOKYO MER-」にもストイックさと洞察力が伺える。主人公の喜多見は海外育ちの設定。「海外ドラマを見て、手術中の会話を翻訳しました。『Thank you』と言ってから執刀する。日本では見たことがないですよね」。医療従事者からも話を聞き「(アドリブは)医療リハーサルで自然と言ったセリフでした。机上のセリフでは全然足りないんです」と説明した。

21年、38歳で「孤狼の血 LEVEL2」(白石和彌監督)などで助演男優賞を受賞した。40代に入り「変化の時期」だという。「残り時間を意識しています。失敗して、恥をかいて学びたい。それを、50代に生かしたいです」。【加藤理沙】

◆鈴木亮平(すずき・りょうへい)1983年(昭58)3月29日、兵庫生まれ。06年テレビ朝日系「レガッタ~君といた永遠~」で俳優デビュー。07年「椿三十郎」で映画デビュー。NHK大河ドラマ「西郷どん」、TBS系ドラマ、日曜劇場「下剋上球児」主演。186センチ、血液型A。

◆エゴイスト 田舎町でありのままの自分を隠していた浩輔(鈴木亮平)は、東京の出版社でファッション誌の編集者として自由な日々を送っていた。パーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)と引かれ合い満ち足りた時間を重ねたが、ドライブに出かける約束をしていたある日、龍太は姿を現さなかった。

◆劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~ 横浜みなとみらいのランドマークタワーで爆発事故が発生。地上70階には193名が取り残される。チーフドクター喜多見(鈴木亮平)はYOKOHAMA MERと信念を激突させ、全ての命を救うための戦いを始める。

▼主演男優賞・選考経過 「ゲイだから、ではなく、繊細に演じられる見事さと、本来彼が得意としているような両極端を演じた」(笠井信輔氏)「自然じゃないからこそ自然なんだという意見がある」(品田英雄氏)と圧倒的な支持で、鈴木が1回目で11票を獲得。

     ◇     ◇     ◇

昨年「とんび」「異動辞令は音楽隊!」で主演男優賞を受賞した阿部寛(59) 鈴木さん、このたびは受賞おめでとうございます。まだ1度も共演はないんですが、今、日本で最も可能性を感じている俳優の1人です。これまで数々の役をこなして来て、その1つ1つに全身全霊型破りな努力を重ねてきたにもかかわらず、常に新鮮でユーモアもあり清潔感を失わない、この人はどこまで可能性を秘めているんだろう。共に作品を作るにあたって、これほど信頼できる人がいるのだろうかと思わせる俳優さんです。いつの日か共演を楽しみに自分自身も精進していきたいと思います。主演男優賞、本当におめでとうございます。