映画「ある男」で脚光を浴び、TBS系ドラマ「不適切にもほどがある!」のキヨシ役で名前を広めている、俳優の坂元愛登(15)に先日、インタビューする機会があった。10代の俳優に話を聞くのは今回が初めて。

ひとまわりほど年下の10代に、どんなテンションで向き合えば良いのか、答えやすい質問は何なのか…取材前、勝手に思い巡らせてしまった。

取材が始まって、5分も経たないうちに、杞憂(きゆう)だと分かった。坂元は質問の1つ1つに対し、その場の空気に流されるような回答はしない。記者は、それまでいらぬ心配をしていた自分を思わず恥じた。

考えのピースを1つ1つはめていくように、丁寧に落ち着いた物腰だった。自身の性格は劇中のキヨシと違い、普段は「ローテンション」という。テンションが上がる瞬間は「自分の演技が肯定された時です」と迷わず答えた。ドラマでは、多感な中学生を演じるだけに「おっぱいが見たいんだ!」と、刺激的なせりふもある。演技上だとしても、ためらいはなかったのか。

「恥ずかしいかなと思ってたんですけど、恥ずかしがったらおしまい。キヨシは笑いを取りに行っているのではなくて、真面目に言っている」とその背景を察した。「とにかく真面目に言っていたら、(劇中の)いろいろな用語とか言葉とか『おっぱいが見たいんだ』とかも変なことじゃないように思えてきて」と全力でぶつかった。担任教師・安森を演じる中島歩(35)からも「一番笑った」と太鼓判を押された。「技術とか器用な役者さんには、できないお芝居だったと言ってもらえました」。芝居の肯定。成功体験を話す坂元は、顔をほころばせ、口調はすこしだけ早口になった様な気がした。10代思春期の“バカ真面目”を体現するまっすぐな演技は、共演者にも視聴者にも届いている。

取材後の帰り際、弊社カメラマンが声をかけた。スクリーンデビューとなった映画「ある男」を映画館で鑑賞し、親子を演じた坂元と安藤サクラ(38)の演技に感動したという。「泣いちゃったよ」と伝えると、坂元は「ありがとうございます…!」とペコッと頭を下げた。見れば、こちらまで釣られるような屈託のない表情。深いおじぎを添え、次のインタビュールームへと向かっていった。

弊社のベテランカメラマンは「きっと大物になる!」と断言。記者も、そう思う。【望月千草】