日本テレビ系ドラマ「太陽にほえろ!」の“山さん”こと山村刑事役で人気を集めた俳優露口茂(つゆぐち・しげる)さんが4月28日、老衰のため都内の自宅で死去したことが2日、明らかになった。93歳だった。
露口さんは1972年(昭47)7月から86年11月まで放送された「太陽にほえろ!」で、石原裕次郎さん演じる「ボス」こと警視庁七曲署の捜査第1係長を支えるベテラン刑事、「山さん」を長く演じてお茶の間の人気を得た。萩原健一、松田優作、勝野洋らが演じる血気盛んな若い刑事たちが殉職していく中で、沈着冷静に被疑者とじっくり向き合って取り調べ自白させる“落としの山さん”として事件を解決に導いた。
そんな山さんが、番組終了7カ月前の86年4月に、まさかの殉職を遂げた。他の警察署の捜査1係長への栄転が決まっていたが、夜道で暴力団員に撃たれ、公衆電話からボスに連絡したところで力尽きた。若手刑事の殉職は“お約束”になっていたが、まさかの山さんの死に、お茶の間は大きなショックを受けた。
クールなハンサムフェースでカールのかかった後ろ髪。アイドル的人気を誇る若手刑事と違い、家庭の主婦から絶大な人気を得ていた。若手刑事や被疑者の顔を見ずに、無言で肩に手を置き思いを伝える様はかっこ良かった。「太陽にほえろ!」が終了してからも、柳沢慎吾(63)のものまね、木梨憲武(63)がコントで後ろ髪の長い刑事“山さん”を演じて長くお茶の間に親しまれた。
柳沢、木梨と同い年の記者は、もちろん「太陽にほえろ!」の大ファン。しかし、当時の金曜午後8時は日本テレビが「太陽にほえろ!」か「巨人戦ナイター中継」、TBSが「3年B組金八先生」、テレビ朝日が「新日本プロレス中継 ワールドプロレスリング」と、いずれも視聴率20%超は当たり前で30%に届こうかという人気番組ばかり。スマホもYouTubeもない時代のテレビのスターが露口さんだった。
そんな露口さんとの出会いは93年のJリーグ開幕だった。新たなプロスポーツの門出を盛り上げるべく、各界の有名人に順位予想をしてもらった。サッカー好きの芸人、タレントじゃありふれている、なにかユニークな人選をと思いながらタレント名鑑をパラパラとめくっていたら、「露口茂事務所」が出てきた。確か場所は広尾だったと思うが、山さんにJリーグ予想をしてもらったら面白いと思って電話したら「はい、露口ですが」と渋い声が電話口から。ご本人だった。取材の趣旨を伝えると「私でいいんですか」と言いながら、上位のチームの予想順位を考えて伝えてくれた。まるで、犯行現場から犯人の姿を描き出すような真剣さだった。
調子に乗って、翌年もお願いすると笑いながら答えてくれた。あの渋い声で、気さくに笑いながら応じてくれた山さん。露口茂さんありがとうございました。今も時折思い出す、記者生活のすてきな思い出です。ご冥福をお祈りします。【小谷野俊哉】



