20年「スパイの妻」でベネチア映画祭(イタリア)銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢清監督(70)が、直木賞と山田風太郎賞をダブル受賞した作家・米澤穂信氏の21年の小説「黒牢城」を映画化(26年公開)し、初タッグを組む本木雅弘(60)が主演することが20日、分かった。時代劇に初挑戦する同監督は、吉高由里子(37)とSnow Man宮舘涼太(32)とも初タッグを組む。黒沢組に参加経験のある菅田将暉(32)青木崇高(45)柄本佑(39)オダギリジョー(49)と、日本を代表する俳優陣がそろった。
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「黒牢城」は、暴虐な織田信長に反発し籠城作戦を決行した荒木村重が、織田軍に囲まれ孤立無援の中、血気盛んな家臣たちを抑えながら妻千代保を心の支えに人々を守ろうと苦心していた中、城内で少年が殺される事件が発生。その後も怪事件が次々と起こる。容疑者は密室と化した城内にいる家臣や身内の誰かで、誰もが疑心暗鬼になっていく中、村重は地下牢に幽閉した信長の使者の、危険な天才軍師・黒田官兵衛から助言を与えられ、共に謎の解決に挑む戦国系心理ミステリーだ。
荒木村重を本木、妻千代保を吉高、官兵衛を菅田が演じる。本木は「『主人公をドン底に突き落として解放するというのが好きなんです』そうサラッと言う黒沢さんは、冷静かつ挑戦的な監督です」と黒沢監督との初タッグを喜んだ。時代劇への出演は、20年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で斎藤道三を演じて以来6年ぶりだが、映画では宮本武蔵を演じた03年の主演作「巌流島 GANRYUJIMA」以来23年ぶりとなる。「歴史上ではひきょう者のレッテルを貼られた荒木村重の内に秘めた葛藤とロマンをすくい取りました。魔的な(官兵衛)菅田さんと清廉な(妻)吉高さんの魅力に虚実ともに翻弄(ほんろう)された京都での撮影の日々でした。原作と同様に、追い詰められて生きる現代人への提言を導くこの作品の仕上がりを、いつになく大きく期待しております」と撮影を振り返った。
菅田は、24年に初タッグを組んだ主演映画「Cloud クラウド」に続く黒沢組への参加となる。「黒沢組にまた参加できて光栄です。前回は、銃撃戦に巻き込まれていく転売屋。次は、どんな役か楽しみにしていたら、黒沢清×時代劇という刺激に、心躍りました」と喜んだ。そして「しかも、あの黒田官兵衛を演じるということで、どんな戦模様が描かれるのかと思いきや、また想像を超える時代劇とミステリーの融合。僕は、ほぼ舌戦。知と血と地にまみれ、脳みそフル稼働の撮影でした。対峙(たいじ)した時の荒木村重役の、本木さんの瞳が忘れられません」と熱く語った。
吉高も「『光る君へ』を見てこの役をやってほしいという黒沢監督のお気持ちを聞いて、自分の演じた役が次の役へとつながるバトンとなりとてもうれしかったです」と、主演した24年のNHK大河ドラマが出演につながったことを喜んだ。「戦国時代は初めてで、その時代の死生観について学んだり悩んだり解せない感情にもぶつかったりもしました。たくさんの方が出演されていますが、私の役はほとんど本木さん演じる村重さんとしか関わりがなかったので、私も映画を見る日を楽しみにしています」と期待した。
撮影は、25年10月初旬~11月中旬まで松竹・京都撮影所のほか、国宝の姫路城、大津・日吉神社、京都・東福寺、重要文化財の京都・大覚寺などで行われた。黒沢監督は「最高に面白い原作に出会えたことが何よりの幸運でした」と映画化の経緯を語った。「ただ時代劇も推理ものも僕は初めてで、うまく映画化できるか不安もありました。時代劇の正しさについては、本木さんはじめキャスト、スタッフ全員が完璧に理解されていたので、その点は大丈夫です。あとは推理ものとして正しくできたかどうか。正直ここが大変難しかったのですが、荒木村重という人物の謎と魅力に導かれてどうにか駆け抜けました」と撮影を振り返った。
青木は、村重の腹心として家臣たちを束ねる荒木久左衛門、宮舘は村重に忠義を尽くす若手の家臣・乾助三郎、柄本は事件の目撃者で狙撃の名手の雑賀下針、オダギリは村重の隠し刀として陰で暗躍する郡十右衛門を演じる。それぞれ、コメントを発表した。
青木崇高 国宝や重要文化財である城で撮影できたことはとても興奮しました。なかなかできない経験です。美しい形でありながら守りの要を果たしている、究極の機能美を感じました。天守閣からの眺めはとても素晴らしく、その領地を治める殿に仕える武将の気持ちを少しは感じられたかなと思います。映画「黒牢城」お楽しみあれ。
宮舘涼太 乾助三郎を演じさせていただきました宮舘涼太です。脚本の段階で、引き込まれると同時にすごく貴重な役をいただけたなと感じました。豪華なキャストの方々、そして黒沢監督のもとで演じるプレッシャーを感じましたが、「たくさん学ぶ、全てを出し切る」という気持ちを掲げて撮影に挑ませていただきました。この作品がどう映像化されていくのか完成がとても楽しみです。「黒牢城」という作品はそれぞれがいろいろな角度で悩み、だまし、奮闘する、誰が正義なのか、そんな作品です。見る方も自分がその時代を生きた一員だという目線で観ていただき作品を感じてもらえたらうれしいです。
柄本佑 黒沢清監督作品に出演する事は全ての俳優の憧れです。もちろん御多分に漏れず僕も憧れています。出演させていただいた今でさえまだ憧れている。それほどまでに、アダルトで艶のある黒沢組の現場に興奮しました。
オダギリジョー 荒木村重という武将の謎の多さに大きな魅力を感じました。それを演じるのが本木さん。そして初の時代劇に挑まれるという黒沢監督。その現場をいち早く見られるなんて、役得と言うものでしょう。俳優やってて、良かったかもかも。
黒沢監督は本木、菅田、吉高の起用理由についても語った。
(本木)本木さんとは前々から何かチャンスがあればご一緒したいと思っていましたが、今回の原作における主人公・荒木村重は世間が持つ戦国武将のたけだけしい、荒々しいイメージとは違い、そんなふりをしつつ実はドライで、すべて理屈で考えつつ無用な殺生は絶対にしないという、とても現代的なキャラクターでしたので、その両面を自然に表現できる俳優は誰かと考えたときに、真っ先に浮かんだのが本木さんでした。
(菅田)主人公村重に協力しつつ翻弄(ほんろう)するメフィストフェレスのような黒田官兵衛、若手でこれを演じきることのできる俳優は菅田将暉しかいないと最初から確信していました。
(吉高)可憐(かれん)な見た目とは裏腹に、底知れない安定感を漂わせる俳優です。豹変(ひょうへん)していく荒木村重を陰で支えるパートナーとして、彼女ほどふさわしい人はおりません。
原作者の米澤氏も「映画化のお話を頂き、とても光栄に思っています。原作は暗闇が映える物語なので、きっと、心に焼きつくような暗闇が見られることでしょう。楽しみにしています」と期待を寄せた。



