歌舞伎俳優中村鷹之資(たかのすけ=26)が4月に初の海外公演に出発する。このほど、3都市で開催される公演「女方ができるまで」の取材会に出席し、父の中村富十郎さん(11年死去)との思い出も語った。

富十郎さんは踊りの技量に優れ、清涼感のある芝居も持ち味だった。現在活躍中のある役者が10代のころ、富十郎さんの踊りを見、実際に教わり「理想の踊り、と心に決めた」と話してくれたこともあったほどだ。

鷹之資も、見ているこちらが背筋が伸びるような踊りをする。きれいで、きびきびとしていて、愛嬌(あいきょう)のある踊りも得意だ。普段は立役が多い。女形の芸術性に焦点を当てた巡業公演を行うというのは意外だが、必見だと思った。鷹之資いわく「日本舞踊、歌舞伎舞踊の良さが詰まっ」ている「藤娘」を踊る。歌舞伎俳優は子供のころは皆、女形の踊りの稽古をするというし、鷹之資の踊りを見るにつけ、しっかり基礎を教わり、稽古を積んでいるのが分かる。その鷹之資が言う「踊りの良さが詰まった」演目はぜひ見たいものだと思った。

また、パリでは「石橋(しゃっきょう)」も上演される。クライマックスの勇壮な毛振りが見どころの1つだが、鷹之資は「毛振りは唯一父から教わっているものです」と明かした。

「父は僕が11歳の時に亡くなったんですが、14歳になったらいろんなことを教えると言ってたので、基本的な役のこととか、稽古を見てもらうということはほとんどなかったんです。唯一、父の(自主公演)矢車会で『連獅子』をさせていただいた時に毛振りを見てくれました」と話した。鷹之資によると、洋装で稽古を見ていた富十郎さんが「違う! 違う!」と立ち上がり、足袋を履いて、子供用の毛のかつらを着けてやってみせてくれたのだという。

また、富十郎さんは海外公演の経験が豊富で、旅行も大好きだったそう。鷹之資は「『何かお話しして』と言うと、延々と海外公演のことを話してくれたこともあります」とした。いろんな意味で、父の思い出や教えが詰まった公演になる。

初めての海外公演への緊張も見せる中、かわいらしい面も見せた。公演以外で楽しみにしていることを聞かれると、公演でも訪れるローマを舞台にした映画「ローマの休日」の記念上映を、最近映画館で見たことを話した。鷹之資は「ボロボロ泣いたんですけど、ここ(=ローマ)に行くんだ! と思って。どうしよう休日? どうしようすてきな出会いがあったら? って。ないと思いますけど、そんなことも楽しみです」と笑い、取材陣もほっこりした。

舞台上で、化粧の過程や衣装を着る様子など、女形になるまでのこしらえを見せる趣向もある盛りだくさんの公演。「新たな知見を得て、日本に戻ってこられたら」と語っているので、ぜひ日本でも凱旋(がいせん)上演をしてほしい。

【小林千穂】