<連載「気になリスト」(63)>

 ナインティナイン矢部浩之(41)の兄美幸(よしゆき)氏(43)が二足のわらじで活動している。芸人を目指したが、挫折して引きこもり、失踪後、トラック運転手になるなど紆余(うよ)曲折をへて、11年10月にモデル事務所「ラフェイス」を設立。一方で小説「矢部家」(光文社刊)を出版し、貧しかった幼少期を赤裸々につづった。そして今回、胸の奥に秘め続けた弟浩之への思いを初めて語った。

 「ナインティナインが出ている番組を潜在意識の中で避けていました。言わなくても、弟は分かってると思いますよ」

 20歳でNSC(吉本総合芸能学院)に入所。21歳で上京して海老一染之助・染太郎に弟子入りを志願したが断られた。大阪府立茨木西高サッカー部、NSCともに後輩のナイナイが、ABCお笑い新人グランプリで最優秀新人賞を獲得した92年に、目標を見失い芸人を廃業した。23歳でパチプロになったが、借金が500万円にふくれて25歳で失踪。26歳でトラック運転手になり33歳で借金を完済したが、その間、弟には連絡を取らなかった。「弟のことを言われるのが嫌で、人と話したくなかったんです。被害妄想みたいで」。

 34歳で知人に請われて芸能事務所設立に関わり、12年ぶりに芸能界にカムバックした。「『弟を使えよ』と思っている人もいたかも知れないけど一切、しなかった。自分の中のルールとして守った。弟に迷惑かけたくなかったから」。地道に売り込みを続け、3年かけて所属タレントのラジオ出演を勝ち取り自信をつけた。弟とも連絡を取るようになったが、体調を崩して40歳で退社した。

 約1年間休業したが、「自分が33歳まで大失敗したことをエンタメを目指す若い人に伝えることで、感じてほしい」と事務所を立ち上げた。福岡を中心に才能の発掘に取り組み、渡辺アリサ(20)が「2013トリンプ・イメージガール」に選ばれた。東京・銀座博品館劇場で4月12日に開幕する舞台「ハナノサクコロ~英国大使の御庭番~」への出演も決まった。

 「弟のことを消化できなかった自分が、『ナイナイのお兄さんですよね』と言われるのが楽になり、人間が強くなった。その経験が、世の中の人の生きる力になると思います」

 その言葉は温かく、重かった。【村上幸将】

 ◆矢部美幸(やべ・よしゆき)1969年(昭44)4月5日、大阪府吹田市生まれ。茨木西高卒業後、大阪新阪急ホテルに入社も3カ月で退社し、NSCに入所。雨上がり決死隊が同期。22歳で廃業して飲食、製造、建築など20種以上を経験。現在は社長と作家に加え月1回、大阪府の「アーツ☆エンターテイメント高等学院」で特別講師を務める。(2月25日付

 紙面から)

 [2013年2月25日23時36分

 紙面から]日刊スポーツのオススメ