ファントムシーフは、気持ちのコントロールがうまくいった。スタート直後は3番手。ルメール騎手に逃げるプランはなかったようだが、向正面で少し行きたがると、先頭のキョウエイブリッサ、シーズンリッチをかわして前へ出た。

ファントムシーフで共同通信杯を制してガッツポーズを決めるルメール騎手(撮影・丹羽敏通)
ファントムシーフで共同通信杯を制してガッツポーズを決めるルメール騎手(撮影・丹羽敏通)

馬が掛かるのは、行く気になったところで無理に抑えるからだ。もちろん、後半に脚を残すために折り合いは重要だが、今回のようにある程度手綱を緩めて行かせることで、馬が納得してテンションを鎮めることもある。いわゆる「馬の気に乗る」。これをルメール騎手はやった。

先頭に立って落ち着いた分、外からタッチウッドに抜かれた時も、鞍上の指示にスムーズに従い、2番手で収まった。もし、人馬がケンカしながら3番手を追走していたら、ずっとハミをかんで体力を消耗していたかもしれない。

前半600~1000メートルは(11秒3→)12秒4、12秒8と一気にペースダウンしたが、ここでしっかり脚がたまったことが、上がり34秒1の瞬発力勝負に対応できた理由だ。レース序盤から中盤への巧みな入りが、ファントムシーフに重賞制覇をもたらした。