まさかテーオーケインズが負けるとは…。それも4着です。上位3頭と比べると、道中で外々を回っていた分のロスはあったかもしれませんし、直線は少し追いづらそうなところもありましたが、それにしても1年前や前走の強さからすると、不可解な敗戦です。サッカーW杯もそうですが、スポーツは勝つか負けるか、1回きりの勝負。絶対はないと改めて学びました。

勝ったジュンライトボルトは、何より石川騎手の落ち着いた騎乗が目を引きました。スタートを決めて、道中は中団馬群で我慢。直線に向いた時は前が壁でしたが、慌てずに外へ導くと、ケインズの外から一瞬にして先頭まで抜けました。ダート転向後から手綱を任され、脚をよく知ったうえでの信頼の騎乗でした。

重なったのは、前週ジャパンCのムーア騎手。勝ったヴェラアズールは同じ赤帽(3枠)で、直線は馬群の開いたところをきれいに抜けて差し切りました。石川騎手がお手本にしたかどうかはわかりませんが、世界的な名手と同じレースに乗ることも多いなかで、何かを得たり感じたり、吸収しているのだろうなと私は想像しました。

そういえば、前週のヴェラアズールはダートから芝に転向してのJC制覇。今回のジュンライトボルトは芝からダートに転向してわずか4戦目でのG1制覇でした。父母の血統や距離適性だけで決めつけず、先入観にとらわれず、挑戦することがいかに大事か。ダートで開花させた友道厩舎の采配にも拍手を送ります。

2着クラウンプライドは前走JBCクラシック(2着)で先着を許したケインズには雪辱しました。とはいえ、違う馬が伸びてきてまた2着。悔しい敗戦だと思いますが、ケンタッキーダービーでも先行したように、前へ行けるという武器があります。まだ3歳ですし、また米国競馬に挑戦してもらいたい1頭です。3着ハピも3歳馬。横山典騎手が積極的に出していく競馬で、馬の可能性を広げました。(JRA元調教師)

ジュンライトボルトで勝利しガッツポーズをする石川裕紀人騎手(撮影・森本幸一)
ジュンライトボルトで勝利しガッツポーズをする石川裕紀人騎手(撮影・森本幸一)